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二日目 ~蝉しぐれ~ ②
翌朝、影彦は夏生と村へと出かけた。
いい気持で寝ていた影彦の布団をはいだ夏生は、彼に朝ご飯を食べさせると、追い立てるように外へ連れだしたのだ。
「勘弁してくれよ、昨日着いたばかりなんだぞ」
「俺だって昨日着いたばかりだし。休みは無限じゃないんだぜ。ほら、キリキリ歩けよ」
大きなあくびをかみしめる影彦の背を、半ば押すようにしながら歩く夏生の姿を、通りすがる村人たちは微笑ましそうに見ている。
「よぉ、かっちゃん、おかえり」
「相変わらずなっちゃんと仲えぇねぇ」
鍬を手にしたおじさんが、そうはやし立ててくるのを適当に手を振って応える。風はまだ冷たさを含んでいるものの、既に太陽は眩しく辺りを照らしていた。
二人は白い提灯の吊るされた家の前を横切って、村の中心へと向かう。まだ頭が半分寝ている影彦は、強くなり始めた陽射しに目をこすると、だんだん歩みを遅くし、ついにその場にしゃがみ込んだ。気分は軟体動物かスライムのようで、触ったら溶けそうな気がする。
「ダメだ、ねみぃ」
「影彦?」
ギブアップ宣言したまま、動かない影彦。ぐいぐい引っ張る夏生の手を振り払うと、しゃがみ込んだまま近くの家を指さした。彼の指さす先を見た夏生は、口を開けるとがっくりと肩を落とす。
「お前はどこの小学生だよ!?」
ちりんと、軒先に吊るされた風鈴が鳴った。
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