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二日目 ~蝉しぐれ~ ⑨

「いや、祭り自体は悪いとは思わんのやけど。ご先祖さまを祭る大事なもんやし。でも帰ってきたご先祖さまを村人として扱うとか、なんや気味が悪ぅてなぁ」  そう言って、辺りを見回す。川辺が無言で自分の方を見ているのに、バツが悪くなったのだろうか、そことそこと、何カ所か指を差した後、夏生の座っている場所に人差し指を向けた。 「そこも、誰もおらんのに座布団敷いてあるし。空席やのに前に詰めたりせんのもなんやおかしいしなぁ」  夏生は黙って、梨本の指を見つめていた。 「そこはご先祖さまの席や」  凍り付いたように固まった一同の中、川辺がゆっくりと口を挟む。  影彦は何か言おうとし、その前に夏生はその場から立ち上がった。 「夏生!?」  くるりと、背を向けた夏生は、部屋の外へと駆け出していく。後を追おうとした影彦は、転びそうになりながら、靴を履いて外へ出た。既に彼の姿は小さくなっていて、今から走っても追いつきそうにない。山の方へと駆けていく後ろ姿を、息を切らせて見送る。夏生は昔から走るのが得意で、影彦が勝てた試しがないのだ。  いつの間にか、青かった空は灰色に曇り、ぽつりぽつりとした雫が、彼の頭や肩に落ちてきた。だんだんと激しくなってくる雨足。ゴロゴロとした音が聞こえてくる。  まるで泣いているような夕立の中、影彦はただ立ちすくんでいた。

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