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三日目 ~昼下がり~ ②
今回もそうだろうと思っていたのに、いつの間にか二人は付き合っているといった噂が流れていた。高校生になったんだ、夏生だって彼女がいてもいいはず。なのに影彦がこんなに狼狽えてしまったのは、彼は自分になにも言ってくれなかったからだ。
誰よりも近くにいた。そう思っていたのに、いつの間にか離れてしまったことに、気づいてしまったからだ。
噂の彼女は同じ一年で、なかなか可愛いと同じ村から来た連中が騒いでいるのを聞いたような気がする。それが悔しくて、なんだか自分が置いてけぼりになったような気がして、あの夏祭りの日、迎えに来た夏生に冷たく当たってしまった。
噂を聞いた日以来、影彦の方からも夏生を避けていたため、ずいぶんと久しぶりに彼の顔を見たような気がする。どこかの運動部に入ったとかで、日に焼けて、白かった肌が小麦色になっていた。
「話が、あるんだ」
うつむいたままの影彦に、夏生はそう言って祭りへと連れ出した。
そうだ。あの時、もし、彼に着いて行かなければ。祭りだというのに、山道を離れて、沢へ行かなければ。あの時もし、もし、彼の手を取っていれば。
後悔なんてするのは、いつだって終わってしまってからなのだ。
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