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三日目 ~昼下がり~ ⑧

「ばぁちゃん……、じぃちゃんの未練って」 「そうやなぁ、こんな美人を残して逝ったんや。ワシがそっちに行くまでちゃんと見ててもらわにゃな」  少し目を見開いた祖母は、シワだらけの顔をさらにくしゃくしゃに歪めると、にぃっと、笑った。先ほどまでの空気は、すでにどこにもない。 「じぃちゃん、まだ当分こっちに来ないとダメなんじゃね?」 「せやな、まだまだ当分、影彦の面倒見にゃならんしな。せやけどな」  茶化す影彦の頭をがしがしと撫でると、祖母は皿を重ねて持つと立ち上がった。 「なんでワシらの村にだけ、こんな因果があるんや分からん。けどな、それでも影彦、あん人らは『ご先祖さま』なんや。どんなに好きな人でもな」  せやから、と、付け加える。 「影彦、あん人らを迷わせたらあかんで」 「そんなん、解っとる」  口を尖らせてそう言うと、祖母はからからと口を開けて笑った。またひょこひょこと去っていく後ろ姿を見送ると、影彦は空を見上げた。抜けるような夏の空は、入道雲がプカプカと浮かんでいて、青と白のコントラストが、目に眩しいくらいだ。 「うひゃっ!」  不意に首筋に冷たいものが押し当てられ、影彦は文字通り飛び上がった。 「って、じぃちゃん! なにしてんだよ」 「なんや、ばぁさんにいじめられたんか」 「別にいじめられてへん」  否定したというのに、祖父は「そうかそうか」と笑うと、彼の隣に腰を下ろした。

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