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四日目 ~祭ばやし~ ①
いつも、誘いに来るのは夏生の方だった。だから、誘いに来なくなった時、影彦はどうしていいのか判らなかった。
自分から誘う、なんて、影彦の想像の範囲外だったからだ。あまりにも当たり前になっていて、それが当然で。夏生の優しさに甘えていた。
それでも、彼がいないのは寂しかったのだろう。久しぶりに彼に会った時、いつになく嬉しかった。彼が自分のもとに戻って来てくれたみたいに思えたからだ。
「話が、あるんだ」
祭りの日。そう言って、彼は影彦を連れ出した。そう、今日も。
「影彦、迎えに来たよ」
からころと下駄を鳴らして彼の家にやってきた夏生は、萌葱色の紬の浴衣を着て、狐のお面を被っていた。赤い提灯を手に持った姿は、どこかの案内人のようだ。
高校生だった影彦は、もう大人の、おじさんとも言える年になった。それでも夏生は迎えに来る。影彦がこの村に帰るようになってから、毎年。紺色の紬の浴衣も同じ。あの時と同じ姿でやってくるのだ。彼の年はそこで止まってしまったからだろうか。それとも、止まっているのは影彦の心の方だろうか。
あぁ、違うな。あの時は、お面は被っていなかった。
伸ばされた彼の手を取った影彦は、奥に居るだろう祖母に向け大声で行ってくると告げると、夏生と手を繋いだまま外へ出た。
盆の最後の日。この村で一番の祭りが行われる。
山の上の神社に赤々とした篝火が灯り、提灯が連なった境内に夜店が並ぶ。境内では巫女が神楽を舞い、祭囃子の笛や太鼓の音が辺りに響き渡るのだ。
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