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四日目 ~祭ばやし~ ⑤

 前を進む夏生は、危なげなく先を行くと、くるりとこちらを振り向く。彼の背後には切り立った崖。影彦は、夏生と繋がった手に力が篭るのを感じた。懐かしい、この場所と、この状況。  あぁ、また戻ってきたのだ。自然と、足が震える。 「影彦、話があるんだ」  あの時も、彼はそう告げたのだった。 「俺、お前のことがずっと好きやった。いつから、なんてわかんね。けど、俺もお前も男だし、良くないって思って。でもどうしようもなくて、離れようと思った」  いつも朗らかな声は強張り、言葉は切なげに途切れる。小さく振られる首。狐面に隠れて、表情は判らない。 「ん、そうだよな、解ってる。変だよな。だから距離を置いたり、試しに女と付き合ってみたら忘れられるかと思ったけど、無理だった」  しかし彼は影彦の返事を待つことなく、次の口火を切った。 「夏生」 「あぁ、ごめん。聞きたくなかったよな」 「夏生!」  彼の前に立っているのは影彦なのに、彼が見ているのは自分ではない。別の誰か。 「うん、ホントにごめん。影彦の気持ち、考えてないよな」  いや、違う。影彦ではあるのだけれど、昔の影彦だ。 「解ってる、解ってるんだ。でも、どうしたらいいか、解らないんだ」 「夏生、もう、いいよ」 「ごめん、気持ち悪いよな。いきなりこんなことを言って」 「もういいから!!」  叫ぶと、彼の背中を掻き抱く。

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