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四日目 ~祭ばやし~ ⑦
「そやなぁ、なんで俺は死んでもうたんかな。俺、な。お前と一緒にいたかった。ずっとずっと。高校出たら、一緒の大学行って。東京がいいな。そんで一緒の部屋に暮らすんだ。就職して、お前、建築やりたいゆってたやろ。俺はデザイン系の会社に勤めて」
「うん」
「俺、死んでもこうやってお前に会えればえぇな思ってたけど。でもやっぱり、違うんやな。覚えてるんだ。最後にさ、キラキラした月が水面で歪んで、すごく静かで冷たかったのを。もう会えないのかなって胸が痛かったのを。でもな、今はなにも解らないんだ。覚えてるのはひとつだけだ。俺、お前と一緒にいたかった。ずっとずっと、一緒にいたかった」
夏生は過去形でそう告げると、被っていた狐面を外した。くしゃくしゃになった赤い顔を泣き笑いのように歪めて、影彦をじっと見つめている。
そんな夏生の顔を見返すと、影彦はゆっくりと口を開いた。
「夏生……。俺、お前が好きだ」
「え?」
「お前がいないとダメだって解ったよ。だからさ、俺、お前のところに行くよ。そしたら、ずっと一緒だ」
「影彦、なにを――」
この後起きることはもう判っている。でも、今年は違う。もう、彼を独りにはさせない。
もっと早く、こうしていればよかった。後悔するとしたら、それだけだろう。恋人を抱きしめたまま、影彦は何もない空間へ一歩、踏み出した。
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