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第4話 そして、休日

 休みの日の当日。  俺が咲の自宅マンションまで車で迎えに行くと、咲はクリーム色のスーツ姿で現れた。 「志水、普段着でいいって言ったのに」  スーツ姿以外の咲を見てみたいと内心思っていたので、そうぼやくと、 「社長のご両親にお会いするのに、そういうわけには参りません」  助手席からかしこまった返事が返って来た。  俺は思わずふき出してしまう。 「おまえは俺の彼氏か」 「は?」  咲には俺のジョークは通じなかったようで、いつもの無表情で見つめ返される。  仕事のときはとても頭がキレ、勘も鋭い優秀な秘書だが、案外鈍感な面もあるようだ。  俺はなんだか咲の新しい一面を知ったような気がしてうれしくなった。 「そういや、志水。おまえ彼女とかいるの?」  咲は口数も少ないので、ほとんど一日中一緒に仕事をしていても彼のプライベートはいまだ全く知らない。  人形のような咲には、およそ生活感は感じられず、謎に包まれた私生活を知りたいと思うくらいには俺は咲に興味があったので、この機会に聞いてみる。 「おりません」  咲から帰って来たのは簡潔な答え。 「でも、おまえモテるだろ? 志水」  多分、うちの会社にも咲に思いを寄せてる女子社員は多いはずだ。 「そんなことありません」  咲がもう一つの表情である作り笑顔で答える。 「志水が気づいてないだけで、おまえのこと好きな女って多いと思うよ?」 「そんなことありません」  同じ言葉を繰り返す綺麗な横顔を盗み見ながら、思う。  咲にはどこか近寄りがたい雰囲気があるし、ここまで容姿端麗ぶりを見せつけられると女性も行動に移せないのかもしれない。  自分よりも綺麗な男と付き合うのって、女にとっては抵抗があるんだろうか。  俺が女心について考えを巡らせているうちに、車は実家へとたどり着いた。

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