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第5話 実家にて

「やだ! ものすごいイケメン!」  車の音を敏感に聞きつけ、玄関先まで迎えに出て来た母親は咲を一目見て、早くもミーハーぶりを発揮し、はしゃいでいる。  昔から母は若いイケメンに弱い、筋金入りの面食いだ。 「あなたたち、そうして二人して立っていると、とってもお似合い! 和希(かずき)も我が息子ながらいい男に育ったし、志水くんはとっても綺麗だし」  ……そして少しオタクな面もあった。 「悪い。志水。母さんのことは無視してくれ」 「あら、酷いこと言うのね、和希。……とにかく立ち話もなんだから中に入って。お父さんもお待ちかねよ」  母親に促されリビングへ入ると、ソファで父親がヒラヒラと手を振っていた。 「おかえり、和希。いらっしゃい、志水くん、だったね?」 「はい。初めまして」  咲が口元に笑みを貼り付け、優雅な仕草で挨拶をする。  父親は目を細めて咲のことを見つめている。  こういう表情を父親がするのは相手を気に入ったときだ。  どうやら父も咲に魅了されたらしい。 「君みたいな秘書がついていてくれたら、和希も心強いな。どうか和希のサポートをよろしく頼むよ」 「いえ。こちらこそ社長には教えていただくことばかりです」  咲が完璧な作り笑顔で応じると、父親はうんうんと楽しそうにうなずいた。  母親はともかく、数十年間、人の上に立つ立場でいた父親でさえ、咲の作り笑顔に気づかずにいることが、俺には少なからず驚きだった。

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