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第10話 色っぽいうなじ
綺麗なうなじがとてもエロくて、気づけば俺はそこへ唇を押し当てていた。
「……っ……?」
咲が大きく目を見開いて、俺の方を見る。
作られたものではない顔。
憂い顔に続く今日二回目の咲の新しい表情。
しかし今はそのことに感動している場合ではない。
俺自身、衝動的に咲のうなじにキスしたことで酷く動揺していたから。
「あ、ごめん、志水」
まだ動揺したまま謝る俺に、咲は早くも取り戻した作り笑顔で応じる。
「いえ。社長、酔っていらっしゃるんですよね」
「…………俺が飲んでたの、ノンアルコールなんだけど」
「…………」
俺の返答に咲は目を見開いたままフリーズしてしまう。
驚き顔の咲はいつもより幼く見え、なんだか可愛い。
「……とにかくマンションまで送って行くから」
「いえ。それには及びません。タクシーで」
「いいから。行くぞ。志水」
俺は少々強引に咲の肩を抱き、歩き出した。
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