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第13話 謎2

 志水グループと言えば、うちの会社と同程度の大手会社である。  本来なら咲はそこの幹部として働き、いずれ会社を継ぐべく人物であったはずだ。 『志水グループの今の社長は咲くんの妹の旦那で婿養子だ。ずいぶん年上の旦那でね。いろいろ好き勝手に噂されてるよ。でき婚で、強引に結婚して今の社長の座を得たとかね』 「その旦那、いったい幾つなんだよ?」 『四十三歳。ちなみに咲くんの妹が二十一』 「どうして咲は跡を継がなかったんだろう?」 『咲くんとご両親の折り合いが悪いっていうのは聞いたことあるけれどな。それも噂に過ぎない。よそ様の家にはよそ様の家の事情があるんだ。あんまり深く詮索するのはやめなさい。咲くんはそのことに触れて欲しくなさそうだし』  父親が諭すように言って来るのを遮って、聞いてみた。 「父さん。咲って、どんな子供だった?」  生まれつき咲は表情に乏しかったのか。  それとも、何か理由があるのか。 『……どんなって。そうだな。無邪気でよく笑う子だったよ。少なくとも今みたいなあんな取ってつけたような笑顔を見せる子じゃなかった』 「気づいてたんだ。父さん。咲の作り笑顔に」 『当たり前だ。言っとくが母さんも気づいてたぞ。伊達に長く生きていないんだ、それぐらい見破れなくてどうする。ただな、和希、さっきも言った通り咲くんには咲くんの事情があるんだ。おまえがいくら咲くんの上司だからと言って、土足で彼の心に踏み込む権利はないぞ。そのことだけは肝に銘じておきなさい』 「……分かってるよ」

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