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第14話 分からない
父親との電話を切ると、急に部屋に静けさが落ちて来る。
無邪気でよく笑う子だった、か。
じゃいったい、いつから、どうして咲はあんなふうになってしまったんだろう?
咲の過去に何があった?
不意に見せた憂い顔のわけは?
静寂の中、咲のことばかりを考えている自分に気が付く。
それに、あいつのうなじにキスまでしてしまって。
「あー、まさか俺、あいつのこと好きとか?」
戯れに呟いてみると、その言葉は思いのほか心臓に来た。
いやいやいや。男同士だぞ。
いくら超がつくほど綺麗だからと言っても、そんなことがあっては困る。
確かに俺は咲に魅了されている。
だからこそ大勢の中から彼を秘書に選んだのだし。いや、でも、まさか。
謎めいている咲。
俺はその謎を暴いてみたいと確かに思ってる。
もっと咲のことを知りたいと願ってる。
他の誰にも知られたくなくて、俺だけが知りたいと強く思ってる。
この思いは恋、なのだろうか?
まだ出会って間もないというのに……。
俺は咲に心を奪われてしまってる?
……ああ、自分で自分が分からなくなって来た。
俺は深夜の自分の部屋で一人悩みあぐねたのだった。
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