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第47話 招かれざる客
「どうして、ここが……」
『部下に調べさせたらすぐに分かったよ』
「……何の用?」
『用がなきゃ来ちゃいけないのか? 随分冷たいな。……それより咲、オートロック解除して中に入れてくれよ。車で来たから傘、持ってきてないんだよ』
なれなれしく話しかけてくる健志郎さんに俺は拳を握りしめた。
「嫌です。今日は人が来る予定があるから、帰ってください。そして二度と来ないで」
『もしかしてあの野郎が来るのか、おまえの上司の椎名が』
「そんなこと、あなたには関係ないでしょう?」
『許さないぞ、咲。おまえは俺のものなんだから。とにかく中に入れろ』
「嫌だ」
俺は声を荒らげて拒絶の意を示したが、相手はとんでもないことを言ってきた。
『おまえが俺を中に入れないつもりなら、桜に俺たちのことを全て話すぞ』
「…………そんなことしたら、破滅するのはあなたの方でしょう」
『そんなことはないよ。桜は俺にべた惚れだからな。なあ、咲、かわいい妹を傷つけたくないだろう?』
「…………」
ああ……この人はいつの間にこんなに変わってしまったのだろう。
昔は優しい、少なくとも俺にとっては本当に優しい人だったのに。
五年という年月は人をこんなにも変えてしまうものなのか。
やり切れない思いでオートロックを解除した。
しばらくするとまたインターホンが鳴り、俺は重い溜息をつきながら、部屋の扉を開けた。
健志郎さんが強引に部屋の中へと入ってくる。
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