47 / 65

第47話 招かれざる客

「どうして、ここが……」 『部下に調べさせたらすぐに分かったよ』 「……何の用?」 『用がなきゃ来ちゃいけないのか? 随分冷たいな。……それより咲、オートロック解除して中に入れてくれよ。車で来たから傘、持ってきてないんだよ』  なれなれしく話しかけてくる健志郎さんに俺は拳を握りしめた。 「嫌です。今日は人が来る予定があるから、帰ってください。そして二度と来ないで」 『もしかしてあの野郎が来るのか、おまえの上司の椎名が』 「そんなこと、あなたには関係ないでしょう?」 『許さないぞ、咲。おまえは俺のものなんだから。とにかく中に入れろ』 「嫌だ」  俺は声を荒らげて拒絶の意を示したが、相手はとんでもないことを言ってきた。 『おまえが俺を中に入れないつもりなら、桜に俺たちのことを全て話すぞ』 「…………そんなことしたら、破滅するのはあなたの方でしょう」 『そんなことはないよ。桜は俺にべた惚れだからな。なあ、咲、かわいい妹を傷つけたくないだろう?』 「…………」  ああ……この人はいつの間にこんなに変わってしまったのだろう。  昔は優しい、少なくとも俺にとっては本当に優しい人だったのに。  五年という年月は人をこんなにも変えてしまうものなのか。  やり切れない思いでオートロックを解除した。  しばらくするとまたインターホンが鳴り、俺は重い溜息をつきながら、部屋の扉を開けた。  健志郎さんが強引に部屋の中へと入ってくる。

ともだちにシェアしよう!