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第60話 不安なんて、ない……
「……咲、おまえ、もしかして昼間の話聞いたのか?」
「……なんのことでしょうか?」
俺は社長には久しく見せていない完璧な作り笑顔で答える。
だが、すぐにそれは見破られて、
「やっぱり聞いてたのか。そりやあんなに大声で怒鳴り合ってたら聞こえるわな」
社長は溜息をついた。
「…………」
「咲、あの叔父は頭が古くてさ、ことあるごとに見合いの話を持って来るウザいオヤジなんだ。勿論、俺にはそんな気はないから」
「和希さん……」
「だから、そんな不安そうな顔すんなよ。咲。俺を信じて?」
洗いたての俺の髪にキスをして、社長は広いベッドに俺を押し倒す。
不安なことなんて何もないんだと自分に言い聞かせながら俺は社長の背中に縋りつき、悦楽に身をゆだねた。
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