罪悪感は、あった。 少しでも希望があるなら、とか。相手が男でも大丈夫なら、とか。 細やかな期待を込めながら、眼と、しぐさと、口唇とをフル動員して、全身全霊で誘惑した。 『自らの意思で口付けた』と意識させ、彼を逃がさないための口実が欲しかったのかもしれない。 「ん。は」 貪(むさぼ)る様に口付けられる隙間から、やっとの思いで息をつく。 激しい彼の口付けに、快楽よりも勝利に似た気持ちの方が勝っていた。 『もぅ、逃がさない』 と、腹の底で怨念の様に繰り返しながら、彼の後頭部へと手を伸ばし、抱き寄せる。 どちらの物かも判断の付かない唾液が、僕の顎(あご)を濡らして行っても、それ以上に彼の舌使いの旨さに気を引かれる。 おそらく、今まで付き合って来た女達に与えて来たであろう口付けを受けながら、見も知らないソイツ等に嫉妬する。 自分の中を駆け回る感情が『嫉妬』なのか『欲情』なのか判断の付かぬまま、自分の激情に身を委(ゆだ)ねて行った。 いつまでもキス以上の事をして来ないモモにもどかしさを感じながら、ふと『そうか、男が相手だからやり方が分からないのか』と思い当たる。 それなら。と、ゆっくりと口唇を離し、両手で頬を包んだ。 「先輩。男同士のやり方が分からないんでしょ？なら、全部僕に任せて下さいね」 それだけ言って、返事も待たずに再び口付けた。もしかしたら自覚して無かっただけで、僕自身にも余裕が無かったのかもしれない。 口付けながら、シャツのボタンを片手で外して行く。 そこから中へと手を差し入れると、小さく反応するモモが愛しかった。 寝起きなせいか、やたらと体温の高い逞しい躯に、指を這わせて行く。 歳の割に、と言っては失礼かもしれないが、吸い付いて来る様な滑らかな肌をしていた。 堪らず口唇から首筋へ舌を這わせて行くと、解放されたモモの口から、艶めかしい声が漏れる。その喉の動きを口唇で感じながら胸まで降りて行くと、小さくて可愛らしい突起を口唇で吸い上げ、舌で弄ぶ。 「あッ！‥‥ン」 上気する表情を、下から見上げてるだけでも欲情するってのに、甘い声を聞かされ、ようやく保っている理性が吹き飛びそうになる。 さすがにこれ以上理性が無くなってしまったら、男性初体験のモモに酷い事をしてしまいそうだ。が、それだけは避けなくてはならない。 逸(はや)る自分に言い聞かせる様に何度も繰り返し呟くと、ゆっくり下腹部へと手を延ばし、パジャマ代わりのジャージの上から手の腹で撫で上げる。 「ん」 また小さく吐息を吐くモモに悩殺されそうになりながら、本気で男がダメなら萎えてる所を ちゃんと反応してくれてる事に心が弾んだ。 何度か撫でるだけで少しずつ頭を擡(もた)げるモモの自身を直接触ろうと、トランクスの中に手を差し込む。 すでに先走りに濡れているモモ自身を優しく掌で包み込むと、指を使いながら扱いて行く。 「は。あァッ！」 可愛らしい声を上げるモモの口唇に、堪(たま)らず口付ける。 「ん、んん‥」 口唇を塞いでしまった事で声は聞けなくなってしまったが、全て軟らかそうで愛らしい口唇をしたモモが悪い。と、身勝手な理由を付けて舌を絡め取る。 モモも感じてくれているのか、僕の背中へ腕を回すと、爪を立てる様にしがみついて来た。 そんなモモに自分自身も反応しつつ、トランクスの中だけでは窮屈そうなので、空いてる方の手でジャージごとトランクスをずり下げる。 障害の無くなったソレを根元から先端まで激しく繰り返し擦り上げると、背中に回されたモモの手に力が入り、ビクビクと体を痙攣させた。 迸(ほとばし)った体液は僕の手の中だけでは収まりきらず、モモの胸元と、僕の上着を濡らした。 「‥先輩‥、もしかして溜まってました？」 少し意地悪く言うと、顔を真っ赤にして逆上する。 「煩い！！余計なお世話だ！！！」 まだ息が上がって、まともに力も入ってないのに強がるモモが、たまらなく可愛い。 「良いじゃないですか別に。恥かしい事じゃないですよ。 ただ、たまにはヌかなきゃダメですヨ？」 言いながら濡れた上着を脱ぐ。 「あ。上着‥悪り‥」 申し訳なさそうに言うと、上着を受け取ろうとする。が、その腕を掴み 「悪いと思ってるんなら、コレ、なんとかして下さいよ」 と、その腕を自分のそそり立った自身へと導く。 「‥‥え‥と。」 ズボンの上からとは言え、他人のソコを触らされて、少し照れながら少し困った様にしながら、しばらくの間固まってはいたが、ゆっくりと身を起こすと、僕のズボンのジッパーを下ろし、トランクスをずり下ろして僕がしてあげた様に、ソコを手で擦り始めた。 「ん‥‥」 『モモの掌』だと思うだけで、今までに無い快感に襲われる。 擦られていくうちに先走りが零れ、イヤラシイ粘着音として辺りに響き始めた。 「モモ‥‥凄い、イイよ‥」 堪らずモモを抱き寄せ、口付けを交わす。 もう何度目になるかも分からない口付けに頭が麻痺しているのか、モモからも舌を絡めて来る様になっていた。 「モモも、堪んないでしょ？」 キスの合間にそれだけ伝えながら、僕もモモの自身へと手を延ばす。 案の定、再び頭を擡(もた)げ始めていたソレをまた扱いてやると、アッと言う間に硬くなって行く。 互いの粘着音しか聞こえない空間の中、僕は本当に理性を失ってしまったのかもしれない。 本能的に、モモのソコを口に含んでいた。 「んァッ！あぁ‥」 快感に震えるモモを感じながら、口唇で扱いて吸い上げる。舌先で先端を擦り、また扱く。 ぬるぬるになった僕の口内で限界に近付きながらも、お返しにと思ったのか僕の自身にも恐る恐る舌を這わせ始めた。 もうトロけそうになりながらも、イッてしまうのが勿体なくて、少しでも長くそうしていたくて、必至に我慢する。 気が付くとシックスナインの格好になっていたというのに、お互い恥ずかしいと言う感覚すらも麻痺させていた。 そのせいも手伝って、耐えきれずにモモの最奥へ舌を這わす。 ビクリと反応するのも構わず、先ほどの彼の迸りと僕の唾液でベトベトになったソコへ、指を挿入した。 「ンク」 咥えたままではあるが、一瞬、痛みなのか快感なのか判断の付かない声を出した後、モモの躯がコワ張る。 「大丈夫だよ‥‥ 僕に任せて？」 安心させようと声を掛けながら、ゆっくり指の根元まで挿入させ軽く捻ると、またゆっくりと引き抜く。 変に力まない様、再びモモの自身を咥えると、指の抜き差しに合わせて扱いて行く。 痛みから快感に変わったのか、僕の自身を弄(いじ)る余裕も無くなった様で、声を殺して身悶える。 「モモ‥‥ だぃすきだよ‥‥」 そんな反応を見てるだけで、堪らなくなるほどモモが欲しくなる。それでも、初めてのモモに痛い思いをさせたくなくて、『焦るな』と何度も自分に言い聞かせ、高ぶる感情を抑え続けた。 口内に収まりきれず溢れる体液が最奥まで辿り着き、ほぐす手助けをしてくれ、僕の指を３本まで円滑に出し入れ出来るまでになった頃には、モモも理性が吹き飛んだのか、声を出して喘ぐ様になっていた。 「あっ！ゥんン！」 甘い声と、間近で聞くイヤラシイ粘着音にドンドン理性を奪われて行く。 「は！！あッ！」 モモも堪らなかったらしく、２度目の迸りを吐き出す。 口唇でモモが脈打つのを感じながら、口内に広がる体液を零さない様に飲み下した。 「ちょっ‥‥！！」 それが恥ずかしかったのか僕の肩へ必至に手を伸ばし、引き剥がそうとしている。 当然そんな抵抗は力ずくで阻止したけど。 「ウラぁ～‥ッ」 ちょっと半泣きな声で訴えて来る姿も、可愛いくて愛らしくて。 ――つい苛めたくなる。 口唇を離すと向き直り 「モモ。」 名前を呼んで。 口付ける。 「んッ」 息も整わないままの口付けに、眉をしかめるのが分かった。 理由は、それだけじゃないだろうけど。 しばらく舌を絡め合い、チュッ。と音を立てて口唇を離す。 「モモの味。」 意地悪く言い、冷静を装ったつもりだったのに、頬が緩むのを自覚した。 「！！ッ！バカ！！」 真っ赤になって手の甲で顔を隠そうとするモモの手を、指を絡めて阻止する。 「なんで？本当の事じゃん？“気持ち良かった”証拠でしょ？ 僕は、感じてくれてたのが嬉しかったけどな」 キス出来そうなほどの至近距離を保ったまま、繋いだ手をそのまま床に縫い付けた。 「モモ。好きだよ。僕も、気持ち良くなって良い？」 言いながら、空いてる方の手で内腿を撫でる様に、足を開いて行く。 「ウラ、待って、俺まだ‥」 ――怖い‥。 消え入りそうに囁くモモの声を、ウラが聞き逃すはずも無かった。 「――‥‥うん。 ゴメンね。性急すぎたよね。 良いよ、モモが“大丈夫”だと思える様になるまで、いつまででも待ってるから。」 少し強がりだけど、優しい笑みを浮かべ、モモの口唇に優しくキスをする。 「ん。ゴメ‥‥」 ウラの想いに応える事が出来ないもどかしさに、うっすら涙を浮かべるモモの睫毛にもキスをすると 「何言ってんの。誰も『何もしない』なんて言ってないでしょ。 気持ち良くなる方法は、他にもまだあるんだよ？」 言うなり、自分のソレとモモのとを擦り合わせ、一緒に掌で包み込んだ。 「これなら、痛くないでしょ？」 ウラの先走りとモモの迸りの名残が、まるで溶け合う様に交ざり合って行く。 互いの耳に響くイヤラシイ粘着音が、幾度も扱かれるソレの音だったのか、それとも夢中で貪った口付けの音だったのか‥‥それはもぅ、どちらにも判断を付ける事は出来なくなっていた。 ただ静かに、軟らかい朝日が、二人の躯を暖かく包み込んで行った。。。