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【モモタロス】
眼が覚めると、目の前に頬の緩んだウラの顔があった。
「‥‥????」
なんで?
おぼろげな記憶を寄せ集めて、昨晩(と言うより明け方)の出来事を思い出す。
「え‥‥っと////」
一気に恥ずかしさが込み上げて言葉に詰まっていると、ふいに口付けられた。
「おはよ。モモ」
ふやけた顔を更にふにゃけさせて、上機嫌な声で挨拶をする。
『ドスケベめ。』と心の中で呟きながら、身を起こそうとして驚く。
全身に重りでも乗せられたみたいに体がダルくて、動く事もままならない。
「あれ!!??」
マヌケた声を出す俺をくすくす(ニヤニヤ?)笑いながら、背中を柔 らかく抱き締める様に撫でて
「昨日は激しくてゴメンね。なんか歯止め利かなくなっちゃって」
そう言いながらまた思い出し笑いをするウラを殴ってやりたかったが、拳も出せそうにない。
恥ずかしくてくすぐったくて仕方ないのに、身動き出来ない自分の不甲斐無い体にも腹が立った。
「バカ!変態!」
精一杯の抵抗は、罵 る事くらいだ。そんな細やかな抵抗もニコニコと受け止めたウラは
「コーヒーでも飲む?」
とだけ言うと、サクサク起きてトランクスだけ手早く履くと、キッチンへと消えて行った。
「‥‥バカ。エロ。変態。」
聞こえない声で、ひたすら悪口を言い続ける。
「寒い。暖めろバカ」
一人取り残された、リビングのソファーの上。知らないうちに毛布が掛けられていた。
そんな些細な事すら暖かく感じる。
そんなウラの温もりを知ってしまった俺は、今まで“一人きりの部屋”をどうやって過ごして来たのか、すでに思い出せなくなっていた。
胸に込み上げる、暖かな温もり。
この暖かさが何なのか、俺はちゃんと知っている。
もぅ随分昔の話になるが、俺にも一応“彼女”が居た。
どんどん仕事を覚え、どんどん仕事が楽しくなった頃に生活の擦れ違いで別れた。
彼女の顔ももうハッキリとは思い出せないが、付き合い始めたあの頃に感じていた温もりは、今ウラに感じる温もりと、何ら変わりは無かった。
そういえば俺、『好き』とか言ってねぇ‥‥
ふと気付く。
確かにウラの誘惑に負けて先に口付けたのは俺の方だけど、これじゃまるでウラを“欲求不満の捌 け口”にしたみたいじゃねぇか。
ウラは、あんなにも沢山の『好き』を伝えてくれたのに。
と言うか、あまりの絶え間ない愛撫(照)に、俺に余裕が無くなったのも、大きな敗因だったのかもしれない。
まぁ、男相手で戸惑いがあったのも理由の一つだが。
──そういえばアイツ。妙に手慣れてたな‥‥
「元々ソノ気があったのか?」
またポツリと呟く。
TVの中でしか知らなかった“同性愛”という世界に居たのであろうウラ。
あんなに毎日顔を合わせていたのに、全く気付かなかったし、違和感も嫌悪感も感じなかった。
それは俺が鈍かったからだけじゃないハズだ。女子社員も、男子社員も皆、ウラに羨望の眼差しを送っていたのを知っている。
何故ならその中に俺も含まれていたからだ。
後輩にそんな事を言うのは当然悔しいし情けない気もするので、自分の心の中だけに閉まって来たが‥‥
その感情が“恋”だったんだと、たった今思い知った。
そんな事を考えていると、ウラが両手にコーヒーカップを持って戻って来る。
「起き上がれる?」
まだ抜けきらない緩い表情を浮かべながら、カップを差し出す。
「当たり前ぇだろ!」
本当は少し辛いが、ほとんど意地で起き上がる。
「残念。起き上がれなかったら、僕が抱き起こしてあげたのに」
我が社の王子が、俺なんかにこんな台詞を吐くなんてな。
今更だが、なんだか物凄い優越感に襲われ始めた。
コイツ、俺なんかが好きなんですよ─!!!なんて、街中で叫んでやりたい気分だ。
「???何ニヤついてんの?」
ふいに声を掛けられ、我に返る。
「別に~」
言いながら、受け取ったコーヒーに口を付けた。
コイツのこんな緩んだ顔も、誰も知らない。コイツがこんな風に笑うのも、誰も知らないんだ。
──全部、俺ので良いんだよな?
そう思うだけで笑いが込み上げてくる。
「???気持ち悪いなぁ~~」
ウラの不思議そうな顔も、今はもう全部俺の物。
「なんか、実感涌いて来た」
「何の?」
「ウラが、俺の物だって言う実感。」
カップから口を離さないまま言うと、頬に口唇の温もりを感じる。
「今頃?
確かに僕はモモの物になったけど、モモも僕のモノだからね」
そう言って今度は瞼 に口付ける。
「さぁ?それはどうだろう?」
そんなウラが可愛いくて、つい意地悪をしたくなる。
「え!?ウソ!?」
慌てるウラも滅多に見れない。
可愛い可愛い後輩に負けてやるのはベッドの中だけにして、普段は俺が優位に立ってたって良いよな。
なんて勝手に自己完結すると、カップのコーヒーをきっちり飲み干してから
「まぁ、俺がお前に夢中なる様に、せいぜい頑張るんだな」
半分強がりを言いながら、ウラの口唇を奪ってやった。
「!!ももぉぉ~~!!」
調子に乗ってまた喚 きながら押し倒して来るウラのみぞおちを足で押しやり
「お前は絶倫か!!」
とかツッコミを入れると
「‥‥モモ限定で‥‥」
なんて返答を返しやがった。
実はコイツはバカなんじゃないだろうか?なんて思った事は内緒にしといて、ようやく言う事をきき始めた体をなんとか動かし、浴室へと向かう。
「ドコ行くの!?」
「シャワー浴びて来る」
「僕も行くよ!」
って、お前は子供か!とは言わなかったが、どんどんウラのイメージが崩されて行く。
コイツ、こんなんだったっけ???
そんな事を考えながら歩いて行くと、まだ体が鈍ってるのか足元がモタつく。
「危な」
瞬間、支えてくれたウラに甘えて、仕方なく一緒に浴室へ入って行くと
「危ないから一緒に入ろうね?」
そう言ってまたニヤけたツラを見せる。まぁ、そんな表情も可愛いんだけど。
「な‥何もすんなよ‥‥?」
少し恐る恐る聞くが
「もちろん!」
なんて即答で答える、全く信用出来ない満面の笑顔に『さすがにもう逃げ切れないよな』と、妙な覚悟をさせられた。
「僕が洗ってあげるね♪」
語尾を上げながら、素早くスポンジを取ってボディソープをプッシュしている。
‥‥嫌な予感がした
ゆったりと背中から腕、胸へと移動して、下腹部へと下りて行く。
自分でするのとは違って、泡の一つ一つまでもがやたら感じるのは、ウラの存在がそうさせるのだろうか?
無性に恥ずかしくなり
「自分で出来るから」
と奪い返そうとしても
「良いから良いから」
としか言わず、嬉しそうに優しく肌を擦る。
「ん‥」
思わず零れた吐息を、待っていたかの様にからかう。
「あれ?感じちゃった?ヤらしいなぁ~モモは」
そうして耳元で言うのも、スポンジを持たない方の手を体に這わすのも、どうせ全部わざとのくせに。言いたくても口を開いたら吐息しか出そうもなくて、思わず堪 える。
「ホラ、モモのココも反応してるよ?」
また嬉しそうな声で、俺の自身に触れる。
ボディソープの泡でヌルヌルの指が、根元から先端までを撫で上げた。
「ン。あぁ‥‥」
つい声が零れる。
「気持ちイイ?堪らない?もっとヨくしてあげようか?」
質問の様に繰り返しながらも、指は擦るスピードを上げ、俺のソレはグングン堅さを増して行く。
浴室だから、声も音も俺の耳に大きく響き、羞恥心にも煽られて、体温が上昇して行くのを自覚した。
「ん。ウラ‥‥は。」
無意識に名前が零れる。
「ちょっ‥‥そんな色っぽい声で名前呼ぶの、反則‥‥」
今まで散々俺の体を弄 んでいたハズのウラの方が、堪らないといった風な声を上げる。
これって、ウラの弱点?
なんて思ったら、わざと困らせてやりたい衝動に襲われる。
「ウラ。ウラぁ~」
名前を呼ぶ度に、小さな吐息が聞こえた。
それと同時に、全身で反応するらしく、俺の自身をなぶっていた手までもが、小さな振動を俺に伝える。
「ずるぃ‥モモ‥‥」
半分泣きそうな声を上げながら、抱き付く様に俺の背中にピッタリと張り付いて来る。
すっかり反応したウラの自身は、俺の腰の下の方で熱く脈打っていた。
そんなウラが可愛いくて可愛いくて
「だいすき‥‥」
ほとんど無意識に、口に出していた。
それが引き金になってしまったのか、二人張り付いた姿勢のまま壁に押し付けられ、最奥に指を挿入される。
「や。あァン!」
一度は指を3本も受け入れた場所だったせいか、今回は痛みではなく『快楽』が体を駆け巡った。
「もぅダメ。僕をこれだけ煽ったモモが悪いんだからね」
言いながら音を立てて指を深く挿入し、引き出す動作を繰り返す。
「あッ。あ。あッ」
動作に合わせて漏れる声も、すぐにウラの口唇で塞がれてしまう。
「ん、んン‥‥」
息をするのもやっとの状況で、最奥に熱を感じる。と、直後に身を裂かれる様な痛みに襲われた。
それがどういう瞬間だったのか、男の俺に分からないハズも無く。
下腹部に感じる鈍い痛みが、ウラと一つになれた喜びに変わるのに、そう時間は掛からなかった。
「モモ。モモ‥」
何度も何度も、優しく俺の名を呼ぶ。
それが心地良くて、安心出来て、暖かくて。痛みも痛みに感じなくなる。
「ウラ‥ぁ‥」
立ったまま突き上げられる“快楽”に、自分を見失ってしまわない様に、気が付けば必至にウラの名前を呼び続けていた‥‥
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