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第11話
「碧くん、準備出来た?」
「…出来た。」
「じゃ、行こっか?終わったら一緒に風呂入ろうね。」
やる事やったらとっと解放して下さい。百歩譲っても風呂ぐらい一人で入らせてくれ…。
殿村なりの優しさなのか何なのか、前処理は一人でさせて貰えた。バスルームから出て来た碧の手を引き、殿村は鼻唄でも歌い出す勢いで寝室に向かった。
どさりとベッドに碧を寝かすと、殿村が乗り上げ優しい手つきで碧のバスローブを脱がした。
毎度、洒落臭いもん支給してと心の中で罵倒していたバスローブが…こんな恋しくなる日が来るとは。
「碧くん。口開けて。べって、舌出して。」
「…っ」
もはやここまで来たら、大人しく殿村に従い、なるべく酷くされない様にしたい。暴れたてまた縛られたら、そっちの方が恐ろしい。
舌にざらりと殿村の舌が合わさり、そのままぐじゅりと口内に押し入られる。
「はぁっ…美味しい…。碧くん、美味しい。」
「…。」
お、美味しいって…。
顔は綺麗なのに本当、言動が気持ち悪いなこの人。
「…あっ‼︎」
そんな白けた目で殿村を見ていると、殿村が急に後ろに指を入れてくる。
「…っ、ふっ、」
「大丈夫だよ、碧くん。また、碧くんの良いとこだけ触ってあげるから。」
しないと一ヶ月後に血を見ると脅され、散々殿村に色々と突っ込まれ開発されただけある。そこまでキツくは無い。痛みもなし。しかも殿村はその時に碧のポイントも把握した様で、慣れた様子で中を探る。
「…っ、んんっ!」
「ふふっ、ここ好きだもんね。あ、逃げないでね。」
「うわっ、」
見つけるとそこばかりぐりぐりと押される。思わず腰が引ける。
「か、楓くん…」
「ん 何?」
「せめて、電気消して…恥ずかしぃっ。」
「…。」
煌々と光の灯る室内では、情けない顔と、哀れに剃られた局部が丸見えだ。顔を腕で隠し、縋るように殿村に頼んだ。しかし殿村の反応はない。
「か、楓く…ふっ‼︎」
どうしたのかと薄目を開けた瞬間、ガバリと殿村に襲われキスされる。
「はー、はー、碧くん、可愛い!あぁ、可愛すぎる‼︎はぁ…、抑え効かなくなったらごめん。なるべく気をつけるから、きつかったら言ってね。」
「え?じゃあ、もう、この状況がきつ…あ!」
ハァハァと酷く激して、殿村は一気に中へ突き入れた。
もうキツいと自己申告したのに!
内心罵倒して、異物感に鳥肌が立つが、直ぐに先程のところを突かれて快感が押し寄せてくる。
「うっ…はぁっ…あっ、き、やだ…〜っ!」
「はぁ、はぁっ、碧、碧っ!」
「ふっ、ん」
殿村はもはや獣みたいに烈烈と動き、碧に荒いキスをしてくる。殿村の行為の衝撃が激しくて、碧の体がガクガクと激しく揺らぎシーツにシワを作る。
怖いやら気持ちいいやら…。頭が混乱する。
「あっ、やっ、ちょ…っ、んんっ‼︎」
あ、出た。
碧は呆気なく達する。しかし殿村は未だなようだ。一向に動きの激しさが治らない。
「ねっ、か、…んっ、〜〜っ、うぅ、楓くん、気持ちいい…っ」
「碧…!」
「やっ、から、やめ…っ!」
何でだよ!
止まれと言ったつもりがまたキスされる。ちゅっちゅっとしつこいので、碧の言葉が意味を成す間がない。
全然止まらないし。
あぁ、また一つ、新しい扉をこじ開けられてしまった。
———-
「碧くん、気持ちよかったね〜。やっぱり、愛のあるえっちは違うね!」
「愛…あったの…。」
「なかったの?あれ?伝わらなかった?」
「…いえ。ありましたね。感動しました。」
愛のあるって…。お前がハァハァ言っていたのは覚えている。
事後、殿村と碧は結局一緒に風呂に入っていた。というか、後ろが痛過ぎて一人で入れなかった。殿村が湯船で足を伸ばして座り、その間に座る。差し詰め、人間ドーナツクッションだ。この人はただの椅子。自分に言い聞かせるが、腰にゆらゆら当たるものに先程の行為を思い出して妙な気分になる。
「はぁ〜、晴れて俺たちは恋人だね。」
「そうでしたね…。」
満足気な声を出す殿村に、抱きしめられてもはや諦めの境地だ。
…レッドカード、早かったな。
「楓くんは、付き合うと何かルールとかあるの?」
「ルール?」
「そう。これはしちゃダメとか、こうしよう、とか。」
こうなったら、ルール内でなんとか上手くやりくりするしかない。
何にしても、コンペが終われば殿村ともおさらばだ。
「うーん。パッと思いつかないけど、俺以外と浮気は禁止、男又は女と二人きりで会うの禁止、メッセージは無視しない、嘘はつかない、俺第一に行動する、金曜日から日曜日はどちらかの家に泊まる。週に数回は夕食を一緒に食べる。可能な限りセックスはする。とか?」
「け、結構多いね…。」
つらつらと述べる殿村に、碧は顔を硬らせた。
抜け道どころか、全部塞がれている。道がない。パッと思いついただけで多すぎだ。
「じゃ、湯冷めしてもだし、お風呂上がろっか!」
「あ、いって。」
「ごめん!抱えてあげるね。」
碧はどこか嬉しそうな殿村に抱えられ、風呂を出た。
———-
「碧くんの髪も、俺が毎日乾かすね!」
風呂から上がると、殿村が碧の髪を乾かしながらまた嬉しそうに話した。
「…会える時はな…。」
「ふふ、そうだね。」
ニコニコと笑って、殿村は碧の髪を乾かした。長い指が碧の頭皮を傷つけないように優しく乾かす。トリミングされる犬みたいな、大事にされている恋人みたいな。
いや、犬だ。またうっかり流されて、絆されるところだった。
あぁ、ふわふわと暖かくて、心地良くて、眠い。
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