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第28話
手洗いうがいを済ませソファに腰をおろそうとした三条を制した長岡はベッドに腰掛けた。
手を引かれドキッとしたのも束の間、にっと悪戯っぽく微笑まれ恋人の考えている事がいやらしい事ではないと悟る。
「部屋とまではいかなくても、ダラけようぜ。
折角でけぇテレビもあんだし飯も作んなくて良いし風呂掃除だってしなくて良いんだ。
背筋伸ばさなくて良いだろ」
「発言が家庭的ですよ」
「とにかく、今日はダラけんだよ」
一緒にな、と綺麗な顔で微笑まれ胸がきゅぅっとした。
こんな大きな男が甘酸っぱく胸をトキめさせるなんてとは思うが、だってこの顔だ。
顔立ちは羨ましいほどほど整っていて表情はやわらかくて、目が俺を好きだとばかりにまっすぐに見てくる。
こんなのたまらないだろ。
立ったまま腕を首に回すように誘導し、動けなくなった隙に腰に腕を回された。
ぽふっと腹に顔を埋め子供みたいに甘えられる。
ギャップを見せてくるのは狡い。
すごく可愛い。
「遥登のにおいすげぇ好き」
「ちょっと、恥ずかしいです…。
緊張して汗かいてるかもですし…」
「だってホテルのにおいすんだろ。
遥登の方が良い。
すげぇ良いにおい」
「それなら…俺だって…」
腹から離れた綺麗な顔がこちらを見上げてくる。
前髪がさらっと動き、額が見えた。
セットしている時とは違う見え方が嬉しいのは独占欲だろう。
三条にだって独占欲はある。
「部屋もベッドも正宗さんのにおいがしません。
俺だって正宗さんのにおいがする方が良いのに…」
「じゃあ、ベッドでごろごろしてにおいつけっか」
隣に腰掛け、はにかむように笑った。
「はい」
「あー、ゲーム持ってくれば良かった。
これでゲームしたら楽しいだろうな」
尻尾がぶんぶんと揺れているような顔に恋人は笑いを含んだ声で約束なとそれを取り付けた。
「はいっ」
「本もあれだけ読むのにゲームも好きだよな。
勉強もしてんだろ。
いつしてんだよ」
「弟に誘われますし、俺だって毎日勉強してる訳じゃないですよ。
したくない日もあります」
「毎日してなくてあの点数かよ」
「テスト勉強してますから。
正宗さんも釣ってくれましたし」
恋人と学校の事を話すのはなんだか不思議な感覚になる。
だけど、長岡先生ではなく長岡とその話が出来るのが嬉しい。
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