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第34話

身体の熱も引き、ベットに腰掛けながら大きなテレビを観る。 折角のホテルなのにいつもと変わらずだ。 だけど、これが良い。 ノックの音にビクッと身体が跳ねた。 こういう場所は、基本的には客と従業員が顔を合わせない筈だ。 客と遭遇しそうになったら隠れるとまで聞くじゃないか。 なら、なんで。 嫌な事ばかりが頭に流れ込んできて、咄嗟に長岡の腕を掴み見上げる。 「大丈夫だよ。 飯だろ。 あ、悪いけど風呂に湯張ってきてくれるか。 でけぇから時間かかるだろ」 丸い頭をくしゃくしゃと撫で更にぽんぽんと撫でられた。 冷たくて大きな手の安心感があっても不安気な色は消えないが、それでも少しでも不安は消してやりたい長岡はいつもの様に口端を上げる。 「な?」 「……はい。 分かりました」 そっと掴んでいた手を離しもう一度長岡の顔を見てから漸く腰を上げた。 長岡も、上手く三条を奥へ誘導し、部屋の扉を開けに行った。

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