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第37話
「ご馳走さまでした」
丁寧に手を合わせた三条は美味しかったですと此方を見ながら言ってくれる。
今日は自分が作った訳ではないが、きちんと感謝する。
“誰が”作ったではなく、誰かが“作ってくれた”から。
今回は料金を支払ったのが長岡なので、此方にもご馳走様でしたと声を掛けてくれた。
当たり前過ぎて見えなくなっている事を当たり前とせずきちんと身に付け行動しているのは凄い。
誰かが作った食事にはその人を見て感謝出来る素直な姿はとても尊敬している。
尊敬する事に歳は関係ない。
良いと思ったところは例え年下からだろうが見習うべきだ。
そんなところにプライドは必要ない。
「ん、美味かったな」
ゴミは纏めて…と言いたい所だが、分別しなければ。
割り箸はホテルからの提供なのでお願いして、皿は皿で1ヶ所に集め、ペットボトルと缶は持ち帰りだ。
「顔が笑ってんぞ」
「すみません。
でも、やっぱり何度見てもゴミを分別してる正宗さんってギャップがあって」
「俺だってゴミの分別位するよ。
自分でしなきゃ誰もしてくれねぇし」
手拭き用に貰ったウェットティッシュで机を拭く三条も十分家庭的だと思うが。
三条は、食事の前も手を洗ったりとしっかりした生活習慣がも身に付いている。
それを恥ずかしいと思わない素直な心も持ち合わせている。
本当に親御さん指導の良さが全面に出る子だ。
育ちが良いって言うのはこういう事なんだろうな。
「つぅか、腹膨れてるか?」
「今日は普通ですよ。
腹いっぱいですけど、沢山食べた訳じゃないので腹は普通ですけど…」
「なんで?」
「なんで、って……」
恋人はえっと…と言葉を紡ごうとするが口篭ってしまう。
「えっちな事するから?」
黙りこくる恋人の耳が真っ赤になっていて図星だと分かる。
本当に可愛くて困る。
「………はい」
「素直で良い子だ。
でも、食ったばっかじゃキツいからもう少し休んでからな。
まだ時間も早ぇし、2人っきりを楽しもうな」
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