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第42話

大きな背中もしっかりと筋肉がついている。 そのお陰でスーツを着た後ろ姿のシルエットも綺麗なんだろう。 細いけど男っぽくて羨ましい 筋肉のお陰か? 俺も、もう少し筋トレ頑張ろ 一瞥した自分の腹筋は、皮が貼り付いただけの貧相なもの。 一応は筋トレをしているが効果はご覧の通り。 筋肉より必要な肉を付ける方が効果がありそうだ。 広い背中をごしごしと洗い次は腕。 そこに消えかけた傷を見付け体温が一気に上がった。 先週のセックスで、長岡にしがみ付いた記憶が鮮やかに蘇ってくる。 「あ、の……腕、すみませんでした…」 「腕? 引っ掻いたのか?」 「…はい。 夢中だったのは覚えてるんですけど…」 「痛くねぇって。 今まで引っ掛かれたのすら分かってなかったし気にすんな」 泡を付けた手で撫でるように洗う事しか出来ない。 痛くないと言われても痛くない様にそっと泡を転がした。 綺麗な物に傷を付けるのは罪悪感がある。 治ると言ってもだ。 「大丈夫だよ。 心配し過ぎだ」 「でも…」 「それに、本当に嬉しいんだよ。 遥登がしがみ付いてきてくれて。 それだけ俺を便りにしてくれてんの嬉しいって。 な」 そう言いながら振り返る長岡の顔はとても優しくて愛おしそうで嘘はないと分かる。 ひとつ頷くと長岡は微笑んでくれた。 こうして甘やかされると9歳という歳の差がより大きく感じる。 恋人は、大人で見た目通り大きくて、余裕があって。 でも、子供の心を忘れておらず生徒達にも偉そうにしない。 だから長岡を好きになったんだ。 そして、やっぱり目標は大きい。 背中や腕、頭と丁寧に洗っていった。

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