43 / 96
第43話
「はぁー、風呂広いな」
足の長い長岡は折ってはいるが部屋よりずっと広く快適そうだ。
横に並んでも入れる広さで、寧ろそうした方が快適。
それなのにいつもと変わらず脚の間に三条を座らせ離れようとはしない。
これで溺愛されていると理解しない人はいないだろうという程の溺愛ぶりだ。
「水持ってきて良かった。
長く浸かってそうだ」
「やっぱり風呂好きですよね」
「んー、遥登と一緒だからだな」
愛おしそうに目を細められドキドキする。
自分の顔の良さをもっと理解して欲しい。
髪から雫を落としながらそんな事を言われ胸がきゅぅと甘くときめく。
長岡は魔性だ。
その見た目だけでなく、言葉でまで人を魅了する。
危険な大人。
「照れてんのか」
「だって…」
ふぃっと視線を逸らすと、長岡から全身を洗って貰う恥ずかしさで忘れていた物が視界に入った。
そういえば、あれなんのボタンだろ
電気…とか?
薄暗くなったり良い感じになるやつ…?
湯船の横に設置されたボタンをじっと見ていると長岡は面白そうに声をかけてきた。
「押してみ」
「え、良いんですか…?」
なんのボタンなのか分からないが、浴室に設置されているのだがら浴室内のなにかだろう。
この部屋はジャグジーではないと言っていた。
じゃあ、なんだ。
好奇心が抑えきれない。
ポタポタと水滴を垂らしながらソレを押す。
そして、それが何のボタンなのかをすぐに理解した。
「光った…!」
「ジャグジーも良いけど、これもまたエロいよな」
「……ナイトプールみたいです」
「あー、あれもエロいよな。
絶対1組はハメてんだろ」
「うわ……」
苦く笑ったかと思えば光源に喜んだり、ころころと変わる表情を眺めては笑う。
ポタと髪から落ちた雫が身体のラインを伝い湯船に溶けた。
そんな小さな事が見える距離で触れていられるしあわせを長岡も味わっている。
「遥登、キスして良いか?」
「え…いつも、聴かないじゃないですか…」
「たまにはな。
で、良いか?」
「はい」
湯であたたまった手が頬から耳を撫でる。
びくっと身体に力が入れば湯が跳ね、意識している事が丸分かり。
恥ずかしい…と思った瞬間、やわらかなものが唇に触れた。
「いつもよりあったけぇ」
「それは…正宗さんも、です」
「他の奴としてるみてぇ?」
「…正宗さんとしか、嫌です」
「かわい。
でも、俺も」
もう一度唇を触れ合わせると、さっきよりほんの少し深くなった。
ともだちにシェアしよう!