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第44話

止まらない。 向かい合って、長岡の脚を跨いでキスをする。 何度も唇をくっ付けた。 何度も角度を変えた。 それでも全然足りなくて、またキスをする。 長岡とのキスはとても気持ちが良くて頭がふわふわしてくる。 唇を触れ合わせているだけなのに不思議だ。 キスの最中に息継ぎの出来ない三条に酸素を吸わせている間、長岡は悪戯に首筋を舐めていく。 「は…」 胸鎖乳突筋をなぞり上げ、辿り着いた耳縁を舐める。 いやらしい音がすぐそこで聴こえてくるのがたまらなく恥ずかしい。 かと思えば、鎖骨に歯を当てて痛みを感じさせたり恋人同士の触れ合いに痛い程早鐘を打つ。 「ここ、声…響くっ」 「隣に聞えやしねぇよ。 “そういう場所”だろ」 暗にラブホテルだと意識させる恋人の腕を掴んで、湯底で滑らない様に突っ張った。 抵抗し過ぎると滑って危ない。 こんなホテルから病院に運ばれでもしたら情けないし恥ずかしい、それに長岡が教師を続けられなくなってしまう。 なるべく大人しくしておいた方が良さそうだ。 跨がっている分高くなった頭から冷たい雫が長岡の顔へと落ちていった。 肌を伝い、いつの間にか湯に混ざり自分の素肌に纏わり付くそれになる。 そんな一連の流れさえいやらしいと思ってしまう。 長岡の表情だってそうだ。 整った顔を男くさくしギラギラした目で見られたら我慢出来なくなっていく。 光る風呂だって決して性的な印象だけの物じゃない。 それなのに、いやらしく思ってしまうのは恋人と一緒に居て期待しているから。

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