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第61話

向きを変えられ漸く正常位。 綺麗な顔が男くさくなるのが好きだ。 だって、この顔は自分だけしか見られないから。 大きなベッドを贅沢に使い貪り食われる。 俎上の魚ではないが、まな板にしては大きく皿にしては贅沢な寝具。 だが、知らないにおいのせいか目の前の恋人がやけに恋しい。 肌に触れていたい。 もっとキスをしたい。 もっと深く交わりたい。 もっと溺れたい。 「ア、あッ……は、げ…しっ」 細い身体は揺さぶられる度に上へとずれていく。 ピンと張られていたシーツは波を作り、本当に溺れているかの様に錯覚する。 踏ん張れる様にシーツを握りしがみ付くしかない。 そんな事をしなくても溺れはしないと頭では理解していても錯覚とは恐ろしい。 長岡は細い腰を無遠慮に掴むと自分の方へと引き寄せた。 「ぐ……ぅっ、」 奥まで嵌まった陰茎の大きさに一瞬吐き気がしたが大丈夫。 食べた物が腹にある状態で長岡の背丈に見合った大きなモノが内臓を刺激するのだから吐き気は承知の上だ。 そんな事より気持ち良い快楽が身を包む。 男くさくなる顔も、ただ漏れの色気も全部俺の。 俺だけのだ。 「手ぇ、肩に回せ」 きつく握り締めていた手を肩に回すように誘導され、しっかりとした肩にしがみつけばピストンが激しくなった。 気持ち良い。 身体が長岡でいっぱいになるのが好き。 長岡でいっぱいになれるのが嬉しい。 「あっ…あ、あ……あ…っ、」 声を出した方が楽なのは確かだ。 こんな誰が泊まっているかも分からないホテルで声を上げながらセックスするなんて、やっぱりラブホテルは特殊な場所だとしか思えない。 ただ、内扉を閉めれば大丈夫だと言う長岡の言葉を信じるだけだ。 「きもちーな」 「は、……は、い」 甘だるい声が鼓膜を惑わす。 恋人の声に溶けていく。

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