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第68話

力が入らずフラフラする足でなんとかベッドに戻って来れたが、もう目が開かない。 眠くて眠くてたまらない。 「遥登、もう少しだけ頑張って起きててくれ」 「…ん」 服を頭から被せられ腕を通す様に言われる。 袖はどこだ。 指が引っ掛かり上手く探せない。 「上だけでも着ような」 「……ぁ、…ぃ」 「遥登、腕はここ。 そうだ。 反対はここ。 ここな。 ん、出来た」 誘導され漸く袖に腕を通せた。 ボトムは細身のものなので就寝時に穿くには窮屈─三条の場合は細過ぎるのでその心配もあまりないが─なので下着のままで寝転んだ。 今日ばかりは末弟より手がかかると笑われても致し方ない。 だって、もう真夜中だ。 一体何時間していたのか定かでない。 休憩なんかじゃ絶対に足りない。 精根尽きた。 「寝るぞ」 「ん……」 無意識に抱き付けば、ぽんぽんと背中を擦られながら抱き締め返された。 ふとんをしっかりと肩まで引き上げられ知らないにおいと長岡のにおいが混ざる。 恋人のにおいが濃い方が良いとばかりにしっかりと胸に顔を押し付け目を閉じた。 長岡が生きている音もする。 知らないホテルのにおいの中に、安心する長岡のにおいに身を寄せた。 甘く誘う睡魔にもう限界だ。 「おやすみ」 「お……お、…なさ…………い」 どこかでリップ音がしたがふとんに溶けた三条にはそれがどこにされたものなのか分からなかった。

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