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第77話

玄関で愛猫達から熱烈なお出迎えを受けた三条は、制服のスラックスに毛を付けたままにこにことしている。 久し振りに入る恋人の部屋はいつもと変わらず本に塗れていた。 だけど、いいにおいがするから不思議だ。 紙のにおいと、ファブリックミストのにおい。 それに長岡のにおいが加わると、とても居心地が良いにおいがする。 長岡は適当に鞄を落とし、勉強机からハードカバーを手にすると直ぐ様手渡してくれた。 「俺はもう読んだから、気にせずゆっくり読めよ」 「ありがとう。 へへ、読むの楽しみ」 にこにこと屈託ない笑顔を見せてくれる三条に長岡もやわらかなものを返す。 クラスメイトは誰も知らない恋人だけが見られる特別な顔だ。 「親仕事でいねぇし、くつろげよ。 今、茶持ってくる」 「あ、お構いなく」 「茶出すくらい構うもなにもねぇだろ。 それとも、俺がいねぇと寂しい?」 艶やかな視線を送られ頬が一気にアツくなる。 「そ…っ、……待てる」 顔を赤くする恋人を残し長岡は階下へと姿を消した。

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