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 あまりに理解の範疇を逸脱していたもので、理解するのに数秒の間があった。今度こそ聞き間違いであって欲しい。そんな願いもむなしく、曇りなき眼で復唱され、言葉を失くす。 「魔力、体液に、宿る。血液、唾液。精液、一番、多い。あなた、私、くれるした」  淡々と続けられる説明を呆然と聞く俺はさぞかし間抜けな姿だったろう。しかし、男の表情や態度はあくまで真面目で、言葉もただ事実を述べているとばかりの平坦な調子だ。  つまり、俺がおじさん相手に盛ってドバドバ射精したから、怪我を治せる程に回復できたと。なんだそれエロ漫画か。 「ますますファンタジー感出てきたな………ん?あれ、じゃあなんで今まで傷だらけのままだったんですか」 「魔力、足りない、だった」 「うん、そうじゃなくて、どうして魔力が足りなかったのかなと。だってあんた……その、男に犯されたんじゃ?」  男の身体にまざまざと残っていた凌辱の痕を思い出し、知らず眉間に皺が寄る。男は少し口籠る様子を見せたが、ややあって重たげに口を開いた。 「私、されたは、暴力。目的、痛め付ける。だから、回復、は、させない」 「ああ成程、そういう感じ。拷問みたいなものですかね……なら興奮してザーメンぶっかけたり中出しレイプするようなお行儀の悪い野郎は居なかったと」 「……薬、打たれた。魔力吸収、阻害」 「うへェ……ちなみに、あんた、誰に捕まってたか分かります?」 「■■■■■の、■■■■」 「アーやっぱり聞き取れねえ!」  説明は淡々としているが、大分えげつない相手に囚われていたようだ。ついでに男を捕えていた者について尋ねるも、返って来たのはまたも聞き取れない言語で詰む。  相手も魔法や魔力について詳しいみたいだし、俺とはまるで関わりが無い世界の人間だろう。名前がわかったところで情報を掴むのは難しいかもしれない。 「しっかしエグいことしますねェ……同じ人間とは思えませんよ、ええ。あんた、そんなヤツのとこからよく逃げられましたね。どうやって抜け出してきたんですか」 「わからない。私、何故、ここに?」  心底不思議そうに男が首を傾げる。兎耳がぱたりと揺れる様は何とも平和で、見ていて可愛……気が抜ける後継だ。  話が確かなら随分酷い目にあって来ただろうに。俺のことはまるで警戒していないように見える。 「逃げられた理由は俺も知りませんよ。俺は昨日、あんたが道端で倒れてるのを拾っただけです。そこんとこは覚えてます?」 「はい。あなた、私、助けた。良き人、ありがとう」 「……そりゃよかった。誘拐犯だと思われてなくて何よりです」  てらいのない感謝の言葉に何だか気恥ずかしくなって、そっと目を逸らす。別に善意で助けた訳じゃない。ただ自分の欲望に従っただけなのに、感謝されるのも可笑しな話だ。

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