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1.夏が始まる(5)

 学校では一緒にいられる時間は、そんなに多くない。だから、こうやって同じ部屋に一緒にいられるだけで、なんだか、嬉しくなって、ついつい顔が緩んでしまう。恥ずかしいから、柊翔には見せないようにしてたけど、つい、気が緩んでしまった。 「何、ニヤニヤしてるんだよ」  そう言って俺のそばまでにじり寄ってくると、両手で頬を引っ張った。 「ひ、ひたひてふ(痛いです)」  顔を真っ赤にしている俺の顔を見て、プッ、と笑うと、つまんでいた指を離し、そのまま両手で俺の顔を包んだ。 「まったく……そんな顔したら、我慢できないじゃん」  そう言うと、優しく唇を重ねた。柊翔の柔らかな唇に、思わずうっとりしてしまう。  唇が離れて、少しだけ寂しいと思った。  ずっと、ずっと、唇を重ねていたいと思いながら、柊翔の唇を見つめていると、柊翔に抱き寄せられて、再び、ゆっくりと重ねる。柊翔の舌先が俺の歯を軽くノックしてきた。だから小さく開けると、ゆっくりと、口の中に、柊翔の舌が入ってくる。優しく口の中を探るような動きに、ドキドキが加速していく。そして俺の舌を探り当てると、柊翔のそれが、逃がさない、と言わんばかりに追いかけてくる。 「んっ、んん……」  柊翔のキスの味は、すごく甘い。  追い立てられるように、だんだんと気持ちよくなってきて、夢中になりすぎて、呼吸のタイミングがわからなくなる。息苦しくて、唇を離した。 「はぁっ、はぁ、んっ……はぁっ」  キスだけでイッてしまいそうになって。柊翔の熱い瞳に魅入られてる俺は、虚ろに見つめ返してしまう。俺のシャツの中に、そっと柊翔の手が入って俺の肌に触れた。  思わず、ビクッ、と身体が強張ってしまった。  柊翔の手のひらの熱い感触が嬉しいのに……身体は、まだ……あの時の、恐怖を忘れていなかった。

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