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1.夏が始まる(6)
「……ごめんな」
まるで、悪いことをして怒られた子供のような顔をして、柊翔は俺の乱れたシャツをゆっくりと元に戻そうとした。
「ごめん……俺……」
シャツに手をかける柊翔の手を止める。
「無理するなよ。要。俺は、お前がそばにいてくれるだけでも、十分なんだから」
そう言って、ギュッと抱きしめてくれる。柊翔の想いに応えたい自分と、素直に応えられないでいる俺の身体。
「少しずつ。少しずつ進めばいい」
そう言って、軽いキスをくれる。
「……うん」
柊翔の胸に顔をうずめて、抱きしめかえした。
「……汗臭くないか?」
苦笑いしながら見下ろす柊翔に、軽くキスを返した。
「そんなことない……柊翔の匂い、好きだ」
上目遣いで見たら、柊翔の顔が真っ赤になった。
「もう~~~っ!」
「うわっ!」
柊翔が思いきり抱きしめたせいで、鼻が潰れそうになった。
「痛いって!」
背中を叩いて、ようやっと離れてくれた。
「要がカワイイのが悪い」
そう言いながら、微笑む柊翔。
ったく……そんな顔されたら、何も言えなくなるじゃないか。
「夏休みに入る前に、行き先決めないとな」
「まだ言ってるんですか?」
「だって、俺にとっては高校最後の夏休みだからな」
……そうだった。
これから先だって、いくらでも『夏休み』はあるかもしれないけど。柊翔にとって"高校時代の夏休み"は、これが最後なんだ。
「……わかりました。柊翔さんもちゃんと考えてくださいね」
そういうと、俺はおもむろに机の上に置いてあったノートパソコンをローテーブルに置くと、電源を立ち上げた。
「とりあえず、どんなとこに行きたいか、色々探しながら見てみましょう」
そして、俺たちは一緒に、この夏の旅行先を探し始めたのだった。
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