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2.旅に出よう(1)
『二人で旅行に行く』
そういう話だった気がしたんだけれど。
俺たちと朝倉先輩の三人は今、学校の近くのファミレスに来ている。終業式の後、旅行の打ち合わせをするのに、俺の家に行くんだと思ってたら、校門のところで待っていたのは、柊翔と朝倉先輩だった。
「こ、こんにちは」
朝倉先輩とは、学校の廊下で会えば挨拶をする程度で、そんなに話をしたことはない。でも、柊翔とは仲がいいみたいで、いつも一緒にいる姿を見かける。それを見るたびに、少しだけズキッとするのは、俺がヤキモチをやいているせい。それは自覚してるから、できるだけ、気づかれないようにしなくちゃ……。
「おう。じゃあ、行くか」
「……マジでお前も来るのかよ」
うんざりした顔をしている柊翔に構わず、肩に手を回して、コソコソと話してる。
……俺の目の前で、そういうのやめて欲しいな。
思わずため息が出てしまう。そんな俺を朝倉先輩が目の端にとらえていたとは、気づきもしなかった。
柊翔が奢ってくれるというので、普段なら頼まないミックスグリルを頼んだ。
「お前、そんな細っこいのに、よく食えるな」
朝倉先輩が、目を丸くして俺を見る。
「俺、まだ成長期なんで」
そう言いながら、ハンバーグを頬張る。肉はやっぱ、旨い。朝倉先輩だって、ライス大盛りの生姜焼き定食だし。
「いいんだよ、要は、少し肉つけたほうがいいんだ」
「そのほうが抱き心地がいいってか」
「ゲホッ!!?」
朝倉先輩がサラッと言う言葉に、俺たち二人は食べている最中だっていうのに、吹き出しそうになる。
「きったねぇなぁ……」
眉間にシワを寄せながら、俺たちから身体をそらそうとしている朝倉先輩。
「お、お前が変なこと言うからだろっ!」
顔を真っ赤にした柊翔が、紙ナプキンを何枚かとると、俺にも渡してくれた。そういうちょっとしたことが、嬉しい。
「なに、照れてんの?」
ニヤニヤ笑いながら、柊翔の顔を見ている朝倉先輩を、俺は呆然として見ていた。
「ヤダ―、獅子倉くんてば、俺のほうがいいってか?」
あんまり見すぎてたせいなのか、俺の視線に気づいた朝倉先輩は、今度は俺の方を揶揄い始めた。
「え、いや、な、何言ってるんですか!?」
状況がいまひとつ把握できずに、オロオロしながら柊翔と朝倉先輩を見比べてしまう。
「あ……要……潤は、知ってるから」
「えっ!?」
顔を赤らめながら、料理を口に運んでいる柊翔を唖然として見ている。
「そういうこと」
ニッコリ笑って、俺の顔を見ている朝倉先輩。その時、朝倉先輩のスマホが鳴った。
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