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2.旅に出よう(2)

 俺たちのこと、知ってるって……。柊翔から話したのか、すごく気になるけど。それでも普通に接してくれている朝倉先輩が、かっこよすぎて、見惚れてしまう。 「何?マジで俺に乗り換える?」  電話を終えた朝倉先輩が、ニヤニヤしながら俺を見る。 「な、何言ってるんですかっ」  慌てて、俺はでかいソーセージに食らいついた。 「潤、あんまり揶揄うなよ」  うんざりした顔で、朝倉先輩を見る柊翔は、もう食べ終えていた。 「わりぃわりぃ、いやぁ、獅子倉くんは、揶揄いがいがあるからさぁ」  アハハ、と笑いながら、キャベツの千切りを頬張った。 「あ、そうだ、ちょっとしたら、遼子たちも来るから」  モゴモゴしながら言う朝倉先輩。遼子って、誰?と、思っていると。 「あ、いたいた」  聞き覚えのある声だなぁ、なんて思いながら近づいてくる声の主を見ると。 「あっ」 「やほっ!ほら、獅子倉くん、席つめて」  にこやかに声をかけてきたのは、朝倉先輩(♀)。その隣は、クールビューティ―な一宮先輩。どうにも、ずっと邪魔されてた感が残ってて、トラウマになっているこの二人の組み合わせ。だからといって、向かい側の柊翔の隣に行く暇も与えられず、奥のほうにおいやられてしまった。 「遼子、そんなに押すなよ」  朝倉先輩がムッとした声で言うと、 「大丈夫だって、獅子倉くんだって、男の子だもん、これくらいじゃ、潰れないでしょ?」  そう言いながら、朝倉先輩(♀)の目に殺意がこもってるように感じるのは俺だけ……?  そうか。朝倉先輩(♀)の下の名前、遼子、ていうんだ。 「遼子、揶揄うのもいい加減にしなよ」  一宮先輩はそう言うと、朝倉先輩(♀)の腕を自分のほうに引っ張った。

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