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2.旅に出よう(3)
「なに?遥ってば、ヤキモチ?」
「そうそう。ヤキモチ、ヤキモチ(棒読み)」
「いやぁん、いけずぅ~♪」
……この二人。
「獅子倉、こいつらは気にするな」
残念そうな顔で、二人を見ている中、その肝心な二人のほうは気にもせずにイチャイチャ。
「おい、遼子、用がないならさっさと帰れ」
「意地悪言わないでよ、兄貴」
この二人は兄妹のわりに、あまり似ていない。朝倉先輩は、柊翔よりも大柄で、もっとガッチリした感じ。朝倉先輩(♀)も、女性にしては大きいという点では似ているのかもしれないけど。目が全然違うかも。朝倉先輩は一重でキリッとしてるのに、朝倉先輩(♀)は大きな二重の目。思わず、両方を見比べてしまう。
「あ、そうそう。鴻上先輩、旅行行くんですよね?」
唐突に朝倉先輩(♀)が、柊翔に向かって話し始めた。
「なんだよ、潤、もう話してるのかよ」
「別にいいじゃん」
「もう、こいつらは邪魔しに来るとしか思えないから、ダメ」
うんざりした顔をしている柊翔。まぁ、俺もその気持ちがわかるから、この二人の組み合わせには、落ち着かない。
「いやぁ、もういいじゃないですかぁ!」
朝倉先輩(♀)が、苦笑いしながら、メニューを見だした。
「お前、それ自分で払えよ」
「なんで~!兄貴、出してくれたって」
「来いとは行ってないし」
ぶぅ~~!と膨れた顔の彼女が、なんだか可愛らしく見えて、思わず笑ってしまった。
「あ、獅子倉くん、そこ笑うとこじゃないよ」
そう言って、朝倉先輩(♀)に俺の頬をつままれてしまった。なんでだか、いつも誰かしらに頬をつままれている気がする。
「あ、あさふらへんぱい~、ひらひれふ~」
「クククク、もう獅子倉くんって、カワイイよね、遥~!」
「はいはい」
俺たちのほうを見もせず、一宮先輩は店員を呼ぶボタンを押した。
「は、遥!私、まだ決まってない~!」
「さっさと決めて。」
う~!と言いながら悩んでいる朝倉先輩(♀)を横目に、男性陣はほぼ食べ終えている。
「で、旅行の件だけどな」
いつの間にか目の前に置かれたオレンジジュースに、ふいっと柊翔の方を見る。ニコリ、と笑った顔を見て、顔が火照ってしまう。
「……おい。リア充ども、俺の話を聞け」
かなりご機嫌ななめな朝倉先輩が、目の前にいた。
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