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2.旅に出よう(4)

「で、もう行くところは決まってんのかよ」  アイスコーヒーを飲みながら、柊翔に問いかける朝倉先輩。 「いや、海にでも行きたいとは思ってはいたんだけど。時期が時期だから、泊まるところとか予約も無理だし、日帰りにでもしようかと、話してたんだ」  柊翔が『な?』と確認するように、俺のほうを見るからコクコクと頷く。 「やっぱな。思いつくのが、おせーんだよ、お前は」  空っぽになったグラスを持つと、おかわりを取りに行ってしまった。俺と柊翔は苦笑いしながら、朝倉先輩が戻ってくるのを待つ。 「で、物は相談」  今度はコーラを持ってきた朝倉先輩。 「うちの親戚のやってる旅館があるんだけどさ。そこに行かない?」  ……へ?  この時期に、そう簡単に泊まれるわけがない。普通、早めに予約するものなのはわかってたし、行く場所次第では、すごくお金がかかるってわかってた。でも、柊翔の『高校最後の夏休み』だから、ちょっとでも、一緒に過ごした思い出が作れたら、とも思った。 「まぁ、条件付きなんだけどな」  そう言うと、にたぁ~っ、と笑った、朝倉先輩。 「う。そういう顔の時は、あんまり、嬉しくない条件だな」  柊翔が嫌そうな顔をしてるっていうことは。やっぱり、かなりヤバそうなんだろうか。 「そんなことないよ~。ちょっとバイトしたついでに泊まるってだけで」 「バイト?」 「バイト?」 思わず、二人して朝倉先輩の顔を見つめてしまった。 「そ。バイト」  朝倉先輩のコーラはあっという間に消えていく。  ……どんだけ喉渇いてるんだ? 「宿泊日数分働いたら、宿泊費はチャラ」 「え?いいんですか?」 「まぁ、それなりに、こき使われるかもだけどな。」 「そんなの、お前が行けばいいんじゃねぇの?」 「……俺も行くんだよ」  グラスに入ってた氷をガリガリ食べだす朝倉先輩。 「あ、私たちも行くのよ」  ちょうど頼んでたパスタが届いたのか、フォークでクルクルと巻きながら、一宮先輩が話しかけてきた。 「そうなんですか……あ、でも、合宿とかは?」 「合宿をはずして行くに決まってるじゃん」  俺と同じミックスグリルを頼んでた朝倉先輩(♀)は、見事に、ハンバーグをがっついてる。

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