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2.旅に出よう(8)

 休憩時間が終わると、夕食の準備が始まる。個室へ運ぶ料理を、一緒に動くおばさんんたちの指示通りに、台車に乗せて、それぞれの部屋まで運ぶ。お客様とすれ違うたびに、軽く会釈をしていくけど、おばさんとは、ほとんど会話をしない。  あまりしゃべる人じゃなくて、よかった。柊翔の方は、おしゃべりな人で、だいぶ苦労しているみたいだったけど。 「獅子倉くん、ここ」  そう言われて台車を止めると、おばさんが先に部屋に入っていった。 「失礼いたします」 「あ、はーい!」  声の感じから、女性グループだというのがわかる。接客はおばさんにまかせて、台車に乗っているこの部屋の食事を持ち上げて、部屋の入口まで持って行く。 「ありがとう」  おばさんは目の前に3つも重ねられている食事の台に驚いていた。 「あ、多すぎましたか?」  一台ずつ渡した方がよかったのかな、と思いながら、見ていると、「いいのよ。お櫃持ってきて」と、台車のほうを指さされた。  中にいるおばさんのところに、お櫃を持って行く。「え、男の子もお手伝いしてるの?」という、女性の声。一応、お客さんだし、とりあえず、笑顔で挨拶、と思って、ニコリとすると、 「やだ、かわいい~!!」  黄色い声が響いた。予想外の声の大きさに、びびってすぐに逃げ出してしまったけど、この人たち、さっきお迎えで見かけた女子のグループかもしれない。 「大丈夫?」  クスクス笑いながら、おばさんが出てきた。 「元気だねぇ、あの子たちも」 「はぁ……」  俺よりも少し年上っぽい感じがしたけれど、大学生くらいなのかな。楽しそうな様子が、少しだけ羨ましくて、俺たちだって、明日は遊ぶぞ!と思い直し、おばさんの後を追いかけた。

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