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2.旅に出よう(9)

 食事の準備が終わっても、今度は片付けに回らないといけない。意外に、落ち着いている暇がなく、その上、人手が足りないのか、途中から一人で行ってもらえないか、と、おばさんに言われてしまった。とりあえず、ニコニコと愛想笑いをしていれば、なんとかなっていたのだけれど。 「あ、さっきの子だ!」  さっそく、女子グループに捕まった。おばさんに頼まれて部屋までお櫃を持っていった時に、挨拶をした人たちだ。 「ねぇ、ねぇ、君、地元の子?」  旅先ということもあるのか、積極的に聞いてくるお姉さんたち。  ……浴衣がはだけかけてるんですけど。 「いえ。違いますよ」 「え、どこから来てるの?」 「内緒です」 「年は?」  オネエさんたちから視線をはずしながら、なんとか笑顔を貼りつけたまま、さっさと片付けて、部屋を出ようとしたとき。 「ねぇ、君。この後、暇?」  お姉さんたちの中の一人、お酒が入ってるのか、少し酒の匂いをした人が、俺の腕に絡みついてきた。 「え、いや、すみません、仕事があるんで」  ゆっくりと、腕をはずそうとするんだけど、このお姉さんはなかなかしぶとくて。 「じゃあ、仕事が終わるの何時?」 「わ、わかんないです」 「ええ、じゃあ、終わるまで待ってようかなぁ~♪」  う。この人の胸が腕に当たる……。  柊翔のことは好きだけど、男性が好きというわけじゃないから、こういうことをされると、俺だって、それなりに困るわけで。 「は、離してください」 「ん~?何~?」  ……酔っ払いは、俺の話を聞く耳がないらしい。へばりついたまま、真っ赤になってる顔を、俺の顔に近づけてくる。このままじゃ、らちが明かない、と、強引に腕を振りぬこうとしたとき。 「お客様、失礼ですが」  ああ……天の助け。

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