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2.旅に出よう(10)

 そこにいたのは、朝倉先輩と一宮先輩だった。 「うちの弟を、あんまり困らせないでくださいな」  朝倉先輩がそう言いいながら、やんわりと酔っ払いの腕をとる。 「未成年相手にしたら、捕まっちゃいますよ?」  クールな表情の一宮先輩が、こっそりと絡んできてた彼女の耳元で囁くと、ビクッとしたかと思ったら、そそくさと自分の部屋に戻って行った。 「た、助かりました~」  半分、泣きそうな気分になってただけに、先輩たちの登場は、本当にありがたかった。 「獅子倉くん、一人で回ってたの?」 「はい~。途中から、一人になっちゃって」 「そっか……遥、先戻ってていいよ。私、獅子倉くんに付き合って回ってくる」 「わかった」 「え、でもっ」 「また、変なのに絡まれたら困るでしょ?」  そういうと、一人で台車を押して行ってしまう。 「あっ」 「早く、行ってきなさいな」  一宮先輩に背中を押されて、慌てて追いかけた。本当なら、たぶん、立場は逆のはずなのに、朝倉先輩のほうが俺のボディーガードみたいになっている。 「なんか、すみません……」  二人並ぶと、あまり身長差のない俺たち。朝倉先輩は着物を着てるから、さすがに男に見間違われることはないだろうけど。 「いいって。うちの親戚の旅館だしね。それに、ここで、なんかあっても困るし。ま、鴻上先輩に恩を売っておくのも悪くないだろうしね。シシシシ」  ……楽しそうに笑う朝倉先輩。  それからは、問題なく食事の片づけが済むと、今度は布団敷きに回された。  なんだか、本当に柊翔とここに来たんだっけ?と思うくらい、顔を見る暇もなく、仕事に追いまくられる。ようやく仕事が終わった頃には、午後九時をまわっていた。

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