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2.旅に出よう(12)

 優しく微笑む柊翔に、なんだか照れくさくなって、ただ、小さく頭を左右に振るだけの俺。 「さぁさぁ、みんな、たくさんあるから食べてね」  柊翔の家で食べた時以来の、家族団欒の雰囲気に、気持ちがほっこりした。しかし、次の日も朝から仕事ということもあって、俺たちはさっさと引き上げた。 「とりあえず、女性陣が先に風呂入って来いよ」  俺たちの部屋の前で、柊翔が朝倉先輩たちに声をかける。 「え、いいんですか?」 「お前らのほうが、こっちいるの長いんだし、やっぱ先輩は敬わないとな」  なんて、冗談っぽく言う。 「鴻上先輩に『先輩』とか言われると、気味悪いんですけどぉ」  そう言いながら「じゃ、おにいただきます」と言って、二人は自分たちの部屋に風呂の準備をしに向かった。俺たちの部屋に戻ると、すでに布団と浴衣まで用意されていた。 「うわ、なんか申し訳ないですね」  女将さんだって、忙しくしてただろうに。 「こりゃ、明日もがんばんないと、ですね。」  ニッコリ笑って、柊翔を見ようとしたら、柊翔がギュッと抱きしめてきた。 「え、えっ?」 「……疲れたけど、要と一緒にいられないほうが、しんどかった」  そう言いながら、さらにギュッと腕に力を入れてくる。隣の部屋には、まだ朝倉先輩たちがいるのに、柊翔が俺の耳元で囁いてくる。 「風呂、要のほうが先に行ってこいよ」 「え?一緒に入ったほうが、時間の節約になると思うんですけど」 「……お前、俺に苦行を強いるわけ?」  俺を見つめる柊翔の目が、すごく熱っぽくて、ドキドキしてくる。 「あ、いや、えと……」  あんまり見つめるから、恥ずかしくて顔をそらそうとした。 「ダメ。ちゃんと、俺の顔、見て」  俺の顎に添えられる柊翔の手が、すごく熱く感じて、柊翔の言葉が、俺の動くことを止めさせる。ゆっくりと、重なる唇。軽く啄むようなキスが、段々と深いキスに変わっていく。 「ふんっ……んん……」 「じゃあ、お先に~!」 「っ!?」  襖越しに、朝倉先輩が声をかけて行った。声の大きさもあって、二人とも思わず、身体がビクッとなって、一瞬唇を離してしまう。そんな動きに、目を合わせた俺たちは、思わず、クスリと笑ってしまった。そして、柊翔は再び唇を重ねて、俺も、止められず、両手で柊翔を抱きしめた。

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