25 / 69

3.再会(2)

 旅館から海まで歩くと十五分くらい。海の匂いが段々と強くなってくる。 「潮風が気持ちいいな」 「はい」  俺たちの脇を子供たちが駆け抜けていく。 「おお~、元気いいなぁ」 「なに、おっさんくさいこと言ってるんですか」 「なんだと」 「だって、そんなセリフ、おっさんみたいじゃないですか」 「こらっ!」  俺たちも、子供たちの後を追うように走りだした。  こんなに思い切り走るのなんて、体育の授業以外にしなくなった。笑いながらだから、もう、息があがってくる。チビの頃は、もっともっと走れたのに。 「つかまえた!」  柊翔に首をホールドされる。  体温が熱い。そして、大好きな柊翔の匂いがする。 「逃げられないぞっ」  グッと顔を近づけて言う柊翔の優しい瞳に、釘付けになった。  ―――その時。 「あ、あれ~?」  聞き覚えのある声が……した。  声のするほうに顔を向けた。  ……なんで、こいつがいるんだ?  ニヤニヤ笑いながら、こっちに近づいてくる。 「なに、獅子倉くん、結局、そいつとつきあってんの?」  ……なんで、加洲高の美人がここにいるんだよ? 「……要、知り合いか?」  ―――逃げたい……逃げたい……逃げたいっ! 「おい、要っ!」  柊翔に肩を揺さぶられて、ようやく意識が定まった。そして、美人も目の前まで来ていた。 「こんにちは。鴻上さん?」  ニヤリと微笑む彼の顔は、やっぱり、淫靡な雰囲気を醸し出す。 「……あんた、誰」  訝し気に美人を睨む柊翔。  ……そうか、柊翔はこいつとは会ってない。  知らないなら、知らないまま、このまま逃げ去ってしまえば。 「三平っ!」  そして、もう一人。聞きたくない声が響いた。  なんで。  なんで。  今日は最悪だ。  ―――なんで、お前がここにいるんだよっ!亮平!

ともだちにシェアしよう!