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3.再会(2)
旅館から海まで歩くと十五分くらい。海の匂いが段々と強くなってくる。
「潮風が気持ちいいな」
「はい」
俺たちの脇を子供たちが駆け抜けていく。
「おお~、元気いいなぁ」
「なに、おっさんくさいこと言ってるんですか」
「なんだと」
「だって、そんなセリフ、おっさんみたいじゃないですか」
「こらっ!」
俺たちも、子供たちの後を追うように走りだした。
こんなに思い切り走るのなんて、体育の授業以外にしなくなった。笑いながらだから、もう、息があがってくる。チビの頃は、もっともっと走れたのに。
「つかまえた!」
柊翔に首をホールドされる。
体温が熱い。そして、大好きな柊翔の匂いがする。
「逃げられないぞっ」
グッと顔を近づけて言う柊翔の優しい瞳に、釘付けになった。
―――その時。
「あ、あれ~?」
聞き覚えのある声が……した。
声のするほうに顔を向けた。
……なんで、こいつがいるんだ?
ニヤニヤ笑いながら、こっちに近づいてくる。
「なに、獅子倉くん、結局、そいつとつきあってんの?」
……なんで、加洲高の美人がここにいるんだよ?
「……要、知り合いか?」
―――逃げたい……逃げたい……逃げたいっ!
「おい、要っ!」
柊翔に肩を揺さぶられて、ようやく意識が定まった。そして、美人も目の前まで来ていた。
「こんにちは。鴻上さん?」
ニヤリと微笑む彼の顔は、やっぱり、淫靡な雰囲気を醸し出す。
「……あんた、誰」
訝し気に美人を睨む柊翔。
……そうか、柊翔はこいつとは会ってない。
知らないなら、知らないまま、このまま逃げ去ってしまえば。
「三平っ!」
そして、もう一人。聞きたくない声が響いた。
なんで。
なんで。
今日は最悪だ。
―――なんで、お前がここにいるんだよっ!亮平!
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