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3.再会(5)
「あいつが要を襲ったヤツだよ」
「……っ!?」
半分は予想してた。
見るからに中性的なヤツに、要がやられるわけはない、と思ってたけど、亮平の言葉が、事実を告げているというのは、本能的にわかる。
奴は嘘は言わない。
黙っていることはあっても、言葉にすることには嘘はない。
そして、その事実を知って、要がなぜあんなに怖がって、嫌がって、悲しそうな顔をしたのか、理解した。
「それでなんで、お前が、あいつと一緒にいるんだよ」
「……」
「絶対、要は誤解したぞっ」
「……」
悲しそうな顔の亮平。
「三平は、黒幕の名前を言うかわりに、うちの高校に転校させたんだよ」
「は?」
「たまたま、あいつの親が、親父の取引先の会社の社員でね。その関係で、転勤もさせた。まぁ、息子がしでかしたことを考えれば、転勤くらいなんでもないだろ」
そう言いながらも、イラッとした顔の亮平は、俺から顔を背けて海を見つめた。
甲高い子供の笑い声が、海辺に響く。
「うちは全寮制だからな。逃げだしたら、自分の親がどうなるかわかるだろうし。その上、うちの剣道部に入れて監視してるようなもんだ」
「……」
「見た目のおかげで、うまく他の奴らには取り入ってるみたいだけどな……俺は奴の正体を知ってる。それに……」
ニヤリと笑った亮平の顔には、今まで見たことがないような悪い顔をしている。
「今のあいつには、河合よりも言うこと聞きたいヤツがいるからな」
「どういう意味だ?」
「それこそ、お前が知る必要はない」
俺の顔を見た亮平は無表情に言った。
――こいつは。
いつの間に、こんなに"嫌な大人"になったんだ。
「お前は、早く戻って要を慰めてやれよ」
そう言うと、三平が向かった方向に、去って行った。
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