29 / 69

3.再会(6)

「……なんだよ。かっこつけやがって」  でも、悔しいけど、俺にはできないことだ。  要を守ってやりたいけど、現実で俺ができることは。  俺は海に背を向けると、急いで旅館に戻った。 「鴻上先輩っ!」  旅館の入口で、一宮に捕まった。 「なんだよ、急いでんだけどっ」 「獅子倉くんに何したんですかっ」 「えっ?」  一宮の顔が、瞳が、怒りを含んでいた。 「さっき、泣きながら戻ってきて、声かけたけど、全然気づかないで走ってたから」 「……」 「部屋に戻ったみたいですから。ちゃんと仲直りしてください」  バシッと、思い切り背中を叩かれた。痛さで思わず、顔がゆがむ。  絶対、赤い手の跡がついているに違いない。そう思いながら、足早に部屋に向かった。  部屋に戻って戸を開けようとして、鍵がかかっていた。そうだ。鍵は俺が持ってる。  じゃあ、どこへ?  俺は考えられる限り、旅館の中を探して回った。そして、女将の家にも行ったけど、当然鍵がかかってて入れない。  ――どこにもいない?  まさか、一人で帰ったとか!?  いや、海に行くのに、水着にパーカーくらいしか着てなかった。それにたいして荷物は持ってなかったし、金だってたいしてもってなかった。  あとは、どこが考えられる?  焦りだけが、俺を追い詰める。  要、どこだよ!?  あと探していないところ……?  どこだ?  どこだ?  ――あ。あそこは?  思い出して向かったのは旅館の裏手。  青い空が広がっているけれど、そこは鬱蒼とした木々に囲まれて日があまり入り込まない東屋。それでも、昨日と同じように潮風が吹いてくる。  いた。  要の横顔が見える。  ひどく青白い顔で、地面を見続けている。  何を思っているのか。  声をかけるのを躊躇するほど、深刻そうな顔をしている。 「……要?」  勇気を出して、声をかけてみた。  "ビクッ"  たいして大きな声ではなかったのに、身体ごと震えた。それでも、俺のほうを見ようとしない。 「要?」  肩に手を置いた瞬間。

ともだちにシェアしよう!