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3.再会(7)

 思い切り俺の手を振り払った。 「あっ」  自分のとった行動に驚いている要は、ただでさえ青白かった顔が、余計に血の気が引いていくように見える。 「大丈夫か?」  俺は心配して、要のそばに近寄ろうと、回り込むと、要は腰が抜けたかのように、ズルズルと椅子の上を移動する。 「……近寄るな」 「……要?」 「ごめん……近寄らないで」  目のあたりを真っ赤にしながら、俺を見ている要。引きつった顔は、俺のほうの心臓が痛くなる。  亮平に会ったことが、そんなにショックだった?  いや、違う。  この前会った時は、こんな反応しなかった。  やっぱり、アイツがいたから?アイツが亮平と一緒にいたから?  それは……亮平に対して、少しは許せる心境になってたってことか? 「……亮平から聞いた」  その言葉と同時に、要は泣きそうな顔で目を背けた。 「ごめん。無神経なこと言った」  そして、ゆっくりと、要のそばに近づいた。  まるで、ケガをした野生の動物に手を伸ばすように。 「大丈夫」  要の握りしめている手に、そっと手を重ねる。  ……小刻みに震えている冷たい手。 「大丈夫だ」  要の目の前にしゃがみこんで、要の両手を包み込む。 「俺がいるから」  要の両手を口元に運んで、優しくキスをする。 「俺がいる」  見上げた要の顔は、涙でボロボロで、ようやっと血がまわってきたように、赤くなってきていた。 「し、柊翔っ、ごめ、ごめんっ、な、さいっ。クッ……フッ……」  包んだままの俺の両手を、自分の額に押さえつける要。 「アイツ……三平っていうらしい。今は、亮平の監視下だそうだ。」 「……」 「たぶん、お前のことだから、色々考えてるかもしれないけど。お前が考えているようなことじゃないからな」  亮平は、要にとって、一番のトラウマの元凶であったのは事実だけれど、きっと、それだけじゃなかったはず。 「信じてやれよ」 「……しっ、信じられるなら、信じたい……でっもっ、今は無理っ……」  涙をこらえようとしてるけど、こらえきれずに、声をつまらせながら話してる姿が、痛々しい。 「……無理するなよ」  要を抱きしめようと、手を伸ばした時。 「やっ……!」  要は顔を引きつらせて、俺の胸を押し返してきた。 「ご、ごめっ、」  自分自身の反応に驚いている要。  それ以上に、要の反応に、驚いている俺がいた。

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