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3.再会(10)
* * *
……暑い……
……あ、暑い……
なんで、こんなに暑いの…?
そして、なんだか重い…?
目をゆっくりと開けると、見覚えのない景色。
あ?ああ、そうだった。俺、旅館に来てたっけ。
瞼の重さが、昨日のことを思い出させる。
それにしても、身体が重くて、暑いのは……?
……わっ!?
お、俺、なんか、抱きこまれてるっ!?
見下ろすと太い腕が、俺の目の前にあって。
せ、背中が熱い……
頭が混乱して、思わず自分の格好を確認してしまう。
……ちゃんと浴衣は着ている。だいぶ肌蹴てはいるけれど、それでも、寝てればこんなもんだろう、という程度。
そんなことで、ホッとしている自分。
外の明るさから、そろそろ起きなきゃ、と俺が身じろぎしたことで、後ろにも動きが出てくる。
「ん~」
という声とともに、抱きしめられて、ドキドキしてしまう。
この後ろにいるのは、柊翔だってわかってる。
だから、怖くない。怖くないけど。
「……暑い……」
もうそろそろ、我慢も限界。
まだ寝ている柊翔を起こさないように、ゆっくりと、柊翔の腕をはずそうとしたら。
「ん~?……要~?」
「あ……」
「……ごめん」
「うん……」
「でも……」
「ん?」
うわっ。
急に柊翔の腕に力が入って、抱きしめられた。
「もうちょっと、要のこと、感じさせて」
首に柊翔の言葉と息がかかる。
ちょ、ちょっと、柊翔っ。
柊翔の息が首にかかるたびに、身体がビクッとしてしまう。柊翔だってわかってるはずなのに、身体を離してくれない。それ以上に……腰に……当たる……。
「し、柊翔……そろそろ、起きないと……」
「ん~」
「いい加減に……」
「ん~~っ!」
「暑いってーのっ!」
思い切り、柊翔の腕を振りほどいて、起き上がった。
「か~な~め~っ」
な、なんだよ、それ。
両手を広げて甘えたような声を出されて、こんな声の柊翔を聞いたことがなかったから、ドキドキしてしまう。
「ほ、ほんとに、そろそろ起きないとダメですよっ。」
そう言って離れたら、チェッと、一言、拗ねた声が聞こえてきた。
見えないけど、拗ねた柊翔の顔が想像できて、思わず微笑んでしまう。
「もうちょっと、味わいたかったのになぁ」
残念そうな柊翔の声は、聞こえなかった。
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