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3.再会(12)
電車の時間には少し早かったけれど、俺たちは駅に向かった。
途中、お土産物屋さんをのぞいたりしたけれど、俺が買って帰るようなのは、母親への土産ぐらい。
「看護師さんたちに、旅行土産ですって、渡してやれよ」
「ん~、受け取ってくれるかなぁ」
「大丈夫じゃねぇの?」
なんだか、適当に言われているような気がしないでもないけど、山積みになってるお土産を見ていると。
「要、ちょっと」
「なんです?」
「……あそこ」
そう言われて、指さされたほうを見る。
駅のそばの、昔からあるような喫茶店の入口に、亮平と宇野さんが立っていた。
「どうして……」
彼らの姿を見ただけで、顔がゆがんでしまう。
「俺が呼んだ」
柊翔の一言に、思わず彼の顔を凝視してしまった。
「ちゃんと、あいつと話せ」
「……この前、柊翔が教えてくれたじゃないか」
「俺の口からじゃなくて、ちゃんと亮平と向かい合って来い」
「なんでそんなことっ」
「……ちゃんと、振ってから俺のとこに来い」
「なっ……!?」
「俺は駅で待ってる」
「……」
なんだよそれ。
俺はもう、亮平と話すことなんてない、と思ってるのに。
それじゃダメなのかよ?
柊翔は俺の荷物を取り上げて、背中を押す。同じように、亮平は宇野さんに押されて、喫茶店に入って行った。
「獅子倉くん。久しぶり」
「……ども」
俺が、ムッとした顔で返事をしたせいか、少し困ったような顔で、俺を見る宇野さん。
「亮平さんと、ちゃんと話してやってください」
「……」
「知らないほうがいいってこともある。でも、知らないと余計にこじれることもある」
「……」
そう言って、俺の肩を叩くと、柊翔とともに、駅に向かっていった。
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