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3.再会(13)
喫茶店の入口で、しばらく動けないでいた。
この時間帯は、観光客がいても、喫茶店に入るというよりは、土産物屋に流れていく人の方が多い。だから、邪魔ではないけれど、宇野さんに背中を押されても、なかなか入れないでいた。
"カランカラン"
「いい加減、中に入れよ」
亮平のほうが、ドアを開けて俺の手を引っ張った。
……前だったら、柊翔以外の大柄な男には恐怖心しかなかったなのに。
亮平のその手に捕まれるのには、軽く"ビクッ"とするだけだった。
連れてこられた席は、店の奥の方。少しだけ暗いのは、昔からやってる喫茶店特有の明るさのせい。
「何飲む?」
「……アイスカフェオレ」
「わかった」
そう言うと、カウンターに寄りかかりながら新聞を読んでいたおばあちゃんに、アイスカフェオレとホットコーヒーを頼んだ。
「……」
「……」
お互いに、何も言えない時間が飲み物が出されるまで、俺たちは何も言葉を交わさなかった。交わさなかった、というよりも、交わせなかった。
「はい、コーヒーと、アイスカフェオレね」
ニコリともせず、おばあさんは飲み物を置くと、再び同じ場所に戻っていく。
「飲めよ」
「……はい」
でも、飲んでも味なんかわからない。
「あの……」
「なに」
「俺、話はだいたい柊翔から聞いてるから。別に今さら、話すことないと思うけど」
亮平の顔を見ずに、アイスカフェオレを、見つめる。
「……それで、お前は納得したのか」
「柊翔が信じてるなら」
「……」
「柊翔が納得してるなら、それでいい」
ふいに目をあげると、亮平と目があった。
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