37 / 69
3.再会(14)
「嘘……ついてないんですよね」
じっと目を見る。
「ああ。嘘はない」
「……それなら……いいです」
「……フッ。柊翔は信頼されたもんだな」
「……」
寂しそうな亮平の顔を見るのが、辛くなる。
「話すこと、もうないよね」
「……お前ら、付き合ってるのか」
「っ!?」
亮平の言葉に、すぐに声が出なかった。
「……そっか」
"はぁぁっ"
大きくため息をつくと、もう一度俺を見た。
もう、その顔には寂しさはなかった。むしろ清々しい微笑みすらあった。
「お前に笑顔があるならいい」
……なんだよそれ。
俺の中の亮平の記憶と、今、目の前にいる亮平がイコールにならない。
「なんだよそれ」
目の前の亮平が、俺の知らない亮平なのが、気持ち悪い。
「お前、本当に、亮平かよ……」
「……残念ながら」
苦笑いしている亮平が俺を見る目が、優しすぎて嫌だ。
「要……俺だって、成長するさ。お前が成長したように」
「……成長なんて、してない」
目の前で握りしめている自分の手を見る。
「お前には、わかんないよ……いまだに……あの時のことが……消えていない俺のことなんて……」
「……悪いと思ってる。本当に。でも、俺がバカだった過去のことは、どうしようもない」
静かな喫茶店で、俺たちは、できるだけ小さい声で話してた。
「今さら言われたって」
「ああ、そうだよな」
「わかってるならっ」
思わず声を荒げてしまう。
「そうだけど。俺がちゃんと、お前にしてしまったことを後悔してること。お前のことを、これからも愛してることを、知っててほしい。」
……"愛してる"?
「フフフ……大丈夫だよ。お前たちの邪魔はしないから」
なぜか楽しそうに笑っている亮平。こっちは、亮平の言葉に、頭が混乱してるって言うのに。
「……なんだよそれ」
俺は顔を赤くするしかない。
「いいな。柊翔。お前のそういう顔が見られて」
そう言いながら、楽しそうに笑ってる。
「亮平……あいつとは、なんでもないんだよな」
「なんだよ、柊翔の言葉を信じるんじゃなかったのか」
「信じてるけど・・・今のお前じゃ、わかんなくなってきた」
顔を顰めながら亮平を見つめる。
「……そっか……ちょっとはヤキモチやいてくれたなら嬉しいのに。まぁ、そんなわけないか」
「……バカか。」
「フッ。そうだよ。俺は、お前には、バカになっちまう」
「……っなに言ってんだよ」
「後で、俺を振ったこと、後悔するなよ」
ムカつくほどいい顔で笑い、コーヒーを飲み干すと、伝票を持って席をたつ亮平。俺は、素直に、その後を追った。
ともだちにシェアしよう!