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3.再会(14)

「嘘……ついてないんですよね」  じっと目を見る。 「ああ。嘘はない」 「……それなら……いいです」 「……フッ。柊翔は信頼されたもんだな」 「……」  寂しそうな亮平の顔を見るのが、辛くなる。 「話すこと、もうないよね」 「……お前ら、付き合ってるのか」 「っ!?」  亮平の言葉に、すぐに声が出なかった。 「……そっか」 "はぁぁっ"  大きくため息をつくと、もう一度俺を見た。  もう、その顔には寂しさはなかった。むしろ清々しい微笑みすらあった。 「お前に笑顔があるならいい」  ……なんだよそれ。  俺の中の亮平の記憶と、今、目の前にいる亮平がイコールにならない。 「なんだよそれ」  目の前の亮平が、俺の知らない亮平なのが、気持ち悪い。 「お前、本当に、亮平かよ……」 「……残念ながら」  苦笑いしている亮平が俺を見る目が、優しすぎて嫌だ。 「要……俺だって、成長するさ。お前が成長したように」 「……成長なんて、してない」  目の前で握りしめている自分の手を見る。 「お前には、わかんないよ……いまだに……あの時のことが……消えていない俺のことなんて……」 「……悪いと思ってる。本当に。でも、俺がバカだった過去のことは、どうしようもない」  静かな喫茶店で、俺たちは、できるだけ小さい声で話してた。 「今さら言われたって」 「ああ、そうだよな」 「わかってるならっ」  思わず声を荒げてしまう。 「そうだけど。俺がちゃんと、お前にしてしまったことを後悔してること。お前のことを、これからも愛してることを、知っててほしい。」  ……"愛してる"? 「フフフ……大丈夫だよ。お前たちの邪魔はしないから」  なぜか楽しそうに笑っている亮平。こっちは、亮平の言葉に、頭が混乱してるって言うのに。 「……なんだよそれ」  俺は顔を赤くするしかない。 「いいな。柊翔。お前のそういう顔が見られて」  そう言いながら、楽しそうに笑ってる。 「亮平……あいつとは、なんでもないんだよな」 「なんだよ、柊翔の言葉を信じるんじゃなかったのか」 「信じてるけど・・・今のお前じゃ、わかんなくなってきた」  顔を顰めながら亮平を見つめる。 「……そっか……ちょっとはヤキモチやいてくれたなら嬉しいのに。まぁ、そんなわけないか」 「……バカか。」 「フッ。そうだよ。俺は、お前には、バカになっちまう」 「……っなに言ってんだよ」 「後で、俺を振ったこと、後悔するなよ」  ムカつくほどいい顔で笑い、コーヒーを飲み干すと、伝票を持って席をたつ亮平。俺は、素直に、その後を追った。

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