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4.火花散る(1)
短い旅行から戻ってきた。
その短い中で、あんなに気持ちが上下するようなことが起こるなんて思いもしなかった。おかげで、その後、2,3日は、身体というよりも気持ちの疲れが抜けずに、何をするのも億劫で。俺とは反対に、柊翔は剣道部の合宿や、夏期講習で忙しくしていた。
そんな中、久しぶりに、中学時代の友人からLIMEのメッセージが届いた。
『久しぶり。明後日のお祭り、行かない?』
そういえば、もう、そんな時期か。
去年も、中学のクラスメートたちと、遊びに行ったのを思い出す。
「いいよ、っと」
送信すると、すぐに既読がついて、返事もきた。
「ん、18時に西口か。おっけー、と」
高校に入ってから、ほとんど連絡とっていなかったけど、こうして思い出したように連絡をくれるのは、やぱり、嬉しいもんだ。そんな、少し浮ついた気持ちでいる時に、柊翔からもLIMEが届く。
『明後日の夜、暇?』
あ……もしかして。
『お祭りですか?』
『そう』
『すみません。もう、中学の時のやつらと約束しちゃって』
『そっか。残念』
俺のほうも、残念。
「いっつもタイミング悪いよね。柊翔って」
思わず、苦笑いしながら、スマホの画面を見つめる。すると、続けざまに柊翔からのメッセージが届いた。
『だったら、今月の最終週にある花火大会は、一緒に行こう』
そっか。
そういえば、花火大会なんてのもあったっけ。今から、花火大会が楽しみで、ニヤニヤしながら、『わかりました』と返事をした。
夏休みのいいところは、朝早く起きないでいいことと、学校に行かないでいいこと。嫌なのは、夏休みの課題があるのと……一人で家にいること。母は相変わらず入院したままで、親父は夏休み返上で仕事をしている……らしい。相変わらず、親父と顔を合わせることもなく、まるで一人暮らしでもしているかのよう。
「洗濯して、自分以外のモノがなければ、本当に一人暮らししてるって思っちゃうよな……」
二階のベランダで、洗濯物を干しながら、ふっと晴れ上がった空を見上げる。
「今日は、図書館にでも行くか」
額にたれてきた汗を拭いながら、洗濯物を入れていたカゴを持って部屋に入ると、家の電話が鳴っているのに気づく。
「え。」
家の電話が鳴るなんて。
不安がよぎる。
まさか、病院から?
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