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4.火花散る(2)
親戚付き合いも希薄な我が家には、めったに家の電話が鳴ることもない。せいぜい、営業の電話か・・・母の入院している病院から、くらい。なぜだか、嫌なことしか思い浮かばず、慌てて階段を駆け下りる。
リビングに着くころには、留守電に切り替わっていた。
誰からだろう。
思わず、留守電に録音される声を、待ってしまう。
「あ」
留守電のメッセージが言い終わる直前、電話は切られてしまった。
……なんだ。
急ぎじゃなかったのかな。
ホッと安心して、部屋に戻った。
「さてと。鞄、鞄っと」
図書館に出かける準備を始めて、スマホも入れようとして、ついついクセで、電源を入れると。
「な、なんだ?」
驚いたことに、柊翔からの電話の着信が3回残ってた。その割に留守電には何も残してない。
……なんだ?
さっきのも柊翔だったのかな。慌てて柊翔に電話をした。
『要?』
ん?普段通りの柊翔の声。
「あ、おはようございます。電話くれましたか?」
『ああ』
「どうかしましたか?」
珍しいから、逆に心配になるんだけど。
『今日は、暇?』
「あ、えと、これから図書館に行こうかと。」
『勉強?』
「はい……なんか、一人で家にいるのも……」
思わず、苦笑いてしまう。
だって、まるで、"寂しい"と言っているみたいに思えて。もう、子供でもないんだけど。
『じゃあ、俺も行こうかな』
「え、夏期講習は?」
『夕方からだから、それまで図書館で勉強するよ』
なんだか、少し楽しそう。そして、俺も、久しぶりに柊翔に会えるのが楽しみになった。
図書館は、柊翔の家のある西口側にある。駅前からバスも出ているけど、余計なお金は使えない、と思って、歩き出した。実際、バスで移動したところで、バス停2つ分くらい。
暑いなぁ、と思いながら、日陰を見つけては、そこに飛び込む。
大通りから、右折すると図書館が見えてくる。
入口には柊翔が小さな団扇を仰ぎながら、俺の方を見ていた。
思わず、手を上げようとした瞬間、柊翔の目の前に二人の女の子が現れて、話しかけてきた。
知り合い……だろうな。
女の子たちは、なんだか嬉しそうに話してる。
……俺、お邪魔かな……?
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