44 / 69

4.火花散る(6)

「まだ、彼女じゃねーし」  顔を真っ赤にしながら、顔を背けてる雅春。 「えー、だって、一緒に帰ってたり、デートも行ったんじゃねーの?」 「行ったけど、まだ、OKもらってねーもん。」  拗ねてる雅春がずいぶんと可愛らしくて、プププっと笑ってしまった。 「要、笑うか?普通。」  ぶすっとしてるから、和人じゃないけど、頭を撫でたくなる心境が、すごくよくわかる。 「わりーわりー」  ニヤニヤしてるせいか、 「全然、悪いって思ってねーだろ」  やっぱ、お前ら、ムカツク、そう言ってどんどん歩いてく。 「そういう和人はどうなのよ?」  雅春の後を追いながら、露店を見て歩く俺たち。 「俺?彼女とかは、いいや」 「なんだよ、それ」  和人は、中学時代はサッカー部のキャプテンで、そこそこモテてた。でも、当時、つきあってる子とかはいなかったはず。 「んー?俺、年上好きだし」 「何、まさか、雅春のライバル?」  ニヤニヤしながら突っ込むと、 「あー?俺、熟女好きなんで」 「……えーーーーっ!?」 「うっそぴょーん」  そう言うと、先を行く雅春のほうに走って行った。  まったく。  楽しそうな二人を見てると、俺も、あいつらと同じ高校に行ってたら……という思いが一瞬だけよぎる。確かに、あいつらといたら、それはそれで楽しい高校生活は過ごせたかもしれない。でも、ふっと、頭に浮かんだのは。  柊翔の笑顔。  そう。柊翔との再会はなかったかもしれない。

ともだちにシェアしよう!