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4.火花散る(8)
しつこく俺に絡んでくる澤登先輩を振り切って、祭りで混んでいる中、露店をのそいて歩く。
雅春は『元カレだろ?関係ねーし』と、言い切りながらも、なんだか無理やり笑ってるように見えるし。俺は俺で、柊翔からちゃんと話してもらえなかったことで、モヤモヤしてる。
「ったく。澤登先輩って、言うことストレートだけど、空気読めねぇからイラッとすんだよな」
そう言いだしたのは、和人。
「ん?」
雅春は一人、お好み焼きの露店の前で、できあがるのを待っている。
「だってさ」
食い終わった焼き鳥の串を、紙に包んでギュッと握りしめる。
「少なくとも、そばにデートしたヤツがいるんだぜ?普通、そんなこと聞かねぇだろ?」
それは、俺も思う。
「雅春には悪いんだけど、俺は、あんま好きになれねぇんだよな」
ボソリと言う和人。
「熟女じゃないしな」
ニヤリと笑うと、フッと笑って「そうそう」と答えた。
お好み焼き入りのプラスチックのパックを2つ抱えて、俺たちのほうに、駆け寄ってくる雅春。
「神社のとこででも、食おうぜ」
一つを和人に渡す。
「俺、焼き鳥は食い終わったから、なんか物色してくるわ」
お好み焼きの気分じゃなかったせいで、俺だけ一人、食べるものがない状態になっていた。
「あ、じゃあ、俺たち、先に行ってるぜ」
「おお。後でLIMEする」
「じゃあな~」
手を振って去っていく二人を見送って、さて、何を食おうか、と歩き出した。同じような露店が続くなか、マジで何にしようかと、悩んでいると
「要?」
聞きなれた、柊翔の声がした。
「え。柊翔さん?」
振り返ると、浴衣姿の柊翔が、ニコニコしながら近づいてきた。
「友達と一緒じゃなかったの?」
「あ、はい。奴らは先に神社の方に行ってて」
「要は?」
「食い物食べ終わっちゃったんで、何かないかと思って」
「そうなんだ」
俺も何か買おうかな、と言いながら、俺の隣を歩く柊翔。
「あ、あの、柊翔さんは一人なんですか?」
ちょっと気になったから聞いてみた。
「いや。俺は柾人と一緒」
そう言って、指さしたのは、かたぬきに夢中になっている太山さん。
「ぷっ。真剣すぎ」
思わず笑ってしまう。
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