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4.火花散る(10)

 なかなか返事をしない柊翔を、チラリと見ると、ポッカーンとした顔。 「……違うんですか?」  訝し気に見る雅春。 「あ、いや、うーん。元カレねぇ……まぁ、元カレといえば言えなくもないんだけど」  んー、と眉間にシワをよせている柊翔。 「なんですか、それ」  同じように、訝しそうに見る和人に、俺もなんだか心もとなくなる」 「いや……もう時効かなぁ」  苦笑いしながら話し出す。 「彼女とは中2の時、クラスメイトだったんだけどさ。当時、彼女、付き合ってる奴がいたんだけど、二股かけられてたみたいでさ。で、その彼氏っていうのが、煮え切らないヤツで」  たぶん、そいつを思い出したのだろう。情けない顔をしてるところを見ると、そいつの煮え切れなさぶりが目に浮かぶ。 「で。澤登に頼まれたんだよ」  はぁ、とため息をつく柊翔。 「何を?」  思わず声をそろえて聞いてしまう俺たち。 「ライバル役?」  は? 「ライバル?」 「そ。澤登の彼氏を焦らせるために、一時的にでもいいから、仲良さそうに見えるようにって」  元カレって。そういうこと? 「え、じゃあ。付き合ってたわけじゃないんですか?」  不思議そうな顔の和人に、柊翔は苦笑いしてる。 「基本的に、澤登の彼氏から見えるところで、イチャイチャしてみせたりはしたけど……」  途中まで言って、俺の視線に気づいたのか、慌てて、 「あ、でも、イチャイチャっていうか、仲良さそうに話してたりとか、腕くんでみせたりとかだけだしっ」  言い訳みたいなことを始める。俺は……ふーん、と、ちょっと冷めた目で見てしまうのは、許してほしい。 「で、結局、澤登先輩、どうなったんですか?」  興味津々に雅春が聞いてくるから、柊翔は苦笑いしながら答えた。 「おかげで、ヤキモチ妬かせまくって、無事に、彼をゲットしてたよ」 「なーんだ。そういう"元カレ"ですか」  安心してる雅春を、和人が残念そうに見ている。 「お前、それ安心するとこじゃないだろ」 「へ?なんで」 「さっきのあれって、今は鴻上さんに興味あるってことじゃん」 「っ!?」  和人に指摘されて、真っ青になる雅春。 「……マジで?」 「普通に考えてもそうだろ」  うん。俺もそう思う。思わず、チラリと柊翔の顔を見る。 「……どういうこと?」  心配そうな顔で俺の顔を見るから、さっきの澤登さんの様子を伝えた。

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